のあ

少女革命ウテナののあのネタバレレビュー・内容・結末

少女革命ウテナ(1997年製作のアニメ)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

動画配信サービスにて鑑賞。
水星の魔女を観る前に観ておかなくてはと思い。

最終話まで観終えた率直な感想は、「私はいったい何を見せられていたんだ……?」です(笑)
たぶんnot for meだったんだな。
もっと若い頃に観ていたら違ったかもとも思います。

まず純粋に39話は長かった!
たぶん主題だけだったら長くても2クールくらいにおさまったんじゃないかと思いますが、ウテナとアンシーだけでなく生徒会はじめ周りの登場人物達の背景もそれぞれ描いているので、話があちこちにいって一つの作品としては少しまとまりが悪い印象(各エピソード自体は良かったし、それはそれで描きたかったこともわかるのですが)。
一言で言うとちょっとテーマ盛りすぎかも。

「大人になるということ(成長)」「既存のジェンダーバイアスからの解放」が本作品の二大テーマかなと思います。
前者については、あくまで高潔さ、気高さを持ち続けることを是としているのが、うーんなんか結局ちょっと健全さに欠けるというか、少女への理想が詰まりすぎていて気持ち悪いというか。
鳳暁生は理想と現実を切り分けることができるようになってしまったずるい大人の象徴のような存在だと思うんですが、それは否定すべきものなのでしょうか?
後者についても、男性が支配する世界からの解放・ジェンダー観の押し付けの否定という価値観には大いに賛同しますが、鳳暁生に"大人"と"男"の両方の役割を与えたのはちょっと背負わせすぎではないかという気がします。(まあ鳳暁生自身や姫宮アンシーの台詞にあるように、学園という庭にいる彼自身が結局大人になりきれてはいない王子様の成れの果てではあるのですが……。)
"王子様という理想"、"男という現実"が表裏になる構造は少々悪趣味に思えます。
男を醜悪な悪役として、ウテナと男女の仲にした上で最終的に拒否させるのも、美奈レイの「だからあたし達 男なんかお呼びじゃないのよ」を煮詰めすぎちゃった感じ。
かつて少女だった身として、その気持ちは正直とてもわかるが、わかるけれども、それは健全な成長と言えるのか、「いつか一緒に輝いて」と綺麗に終えてしまっていいのかはちょっと疑問です。
健全さなど求めていないと言われてしまえばそこまでですが(笑)
一方で、王子様(=特別な存在)にはなれないと気付くこと、今まで世界の全てだった学園という箱庭から出ることで自分の手で主観としての世界を変えられることを描いているのはよかったなと思います。
要素を分解して深掘るともっと色々論じられるのだと思いますが、とにかくテーマ盛り盛りの多層構造なので、一概に評価をしづらいですね……。
もう少し整理できたら書き直すかも。

部分部分で見ると、なんだかんだしっかり少女漫画の王道をやっている面もあるかとは思いますが。
リボンの騎士やベルばらは言わずもがな、男性であることへの憧れと恋情がない混ぜになった思春期の少女というのは吉野朔実の『少年は荒野をめざす』の頃からあるテーマだし、"女"になっても気高さは失われないというのはこれより後の作品ですが、『神風怪盗ジャンヌ』にも通じますね。

以下は非常に個人的な所感。
庵野秀明はアウトプットの仕方は天才かもしれないけど、感覚はたぶん普通の素直な人なんだなぁと思います。普通の人が普通ゆえに拗らせまくってそれを素直に作品にしてる感じ。
対して、イクニはまさに鬼才という呼び名が正しく、常人とは違うぶっ飛んだ人という印象を受けます。
ATフィールドとか言ってるけどよほど庵野作品からの方が人間不信であっても人間への興味を感じるし、キスとかセックスとかはしているけれどイクニ作品からは生身の人間への関心をあまり感じない。
その割に作中のどのキャラも特定の人物への執着心が強く、思い込みが激しくて正直怖いです。言葉を選ばずに言えば、どの作品もちょっと気持ち悪いなと思います……。少女という存在を神聖視しすぎだし、(近親などを除いた)ヘテロの恋愛関係を排斥しすぎだし。
いつも"愛"を描いているんだけど、手触り感のない愛というか。
人間讃歌というよりは、途方もなく高くリアリティのない理想の追求のように私には感じられます。

相変わらず演出は独特でシュール。
鳳暁生編で絶対『ロストハイウェイ』じゃん!ってシーンがあって、テンション上がりました。
黒薔薇編はシャイニングとエリザベートから着想を得たらしいですね。
それを知ってから観るとまた面白いかも。(観るのに体力使うからしばらくはいいけど……。)

昔のアニメだとよくあると言えばありますが、作画ブレは気になります。
たまに青池保子ばりの顔の長さになっているときがある。

キャラとしては樹璃さんがとても好きなのですが、三石琴乃の代表作ってセラムンでもエヴァでもなくこれでは?

全くまとまっていないレビューですが、これでも書くのにとても時間がかかって疲れたのでもう諦めます……。
なんだかんだ色々と考えさせられる作品なので、好みではないけれど、作品としての完成度はやはり高いと言わざるを得ないのかもしれないですね。

「君たちのためにとかいう大人はたいてい信用できない」
のあ

のあ