鬼雀

うる星やつら 第2期の鬼雀のレビュー・感想・評価

うる星やつら 第2期(2024年製作のアニメ)
4.0
高橋留美子の代表作のリメイク。

めぞん一刻、らんま1/2、犬夜叉などなど、ヒット作を上げれば枚挙に暇がない、一世代のバブルを産み出した大家の名作であることは疑いがない。

既に1度アニメ化も映画化もされており、その信奉者も多い。
ただその際は、原作者の意向に沿わない表現も多かったらしく、イマイチ不満が残っていたのか、いわくの残る話しも多い。

まぁあの押井節をどうにかしろという方が無理だ、むしろ押井節に引き込まれたという層も居るので、ある意味でプラマイゼロとも言える。

さて、そんな名作を今日に蘇らせる事の利点としては、あの世代に語り継がれた名作を、昨今の若い世代にも届けるというだけで、まぁ意義はある。

けして悪い評判は聞かない、おそらく初代のアニメ版とちがい、原作準拠の構成であり、それを現在の技術や高純度のスタッフ、キャストで固めているのだから、むしろコケろという方がおかしいのだ。

ただし、個人的には些か疑問も残る、何故いま、うる星やつらなのか?
無駄にハイクオリティな面子で、現行のアーティストに楽曲を提供させ、しこたま贅沢をしてなぜ…鬼ビキニ異星人と、スケベな青少年と個性強めな人々の繰り広げるどたばたコメディを観せる必要があるのか?

端的に、そして俗っぽく解釈するのならば、大家は大家でも「かつての」とつけねばならない程度に、業界も作者も追い込まれたからではと言う他無い。

本作の発表の少し前、氏は自身の人気作品人の続編発表とアニメ化を行ったが、正直パッとしなかった。

そりゃそうである、その人気作も既に十数年が経過しており、その続編を出してどうこうできる状態ではなかった。

失敗では無いが成功とも言い難く、ならばということで、再度名作での復権を図ったと邪推したくなるのは、人の性だ。

確かに本作は面白い、小気味のいいギャグと、愛らしく滑稽な登場人物たちは、ラブコメディの金字塔と言うのも頷ける。

だが、重ねていうがこれを今、深夜枠で放送する理由と利点がイマイチ飲み込めない。

なにがなんでも若い層に売りたいなら、なりふり構わず、少し上の枠に納めるべきだろう。

ネットでの配信が基本になっているからというなら、わざわざ地上波枠を埋める必要がない。

親世代と子供世代の二枚を抜きたいと言っても、現行の親世代は初代の放送から、若干ズレている…

キャラクターの容姿や大まかなあらすじは知っていても、それほど馴染みが無い存在がほとんどだ…

であれば…やはり本作は、かつての大家のリベンジと、制作側と大家の飯の種のために引っ張り出されたと思わざるを得ない。

鬼籍に入られた大家の名作を、全くもって逆方向にブラックアレンジして成功を納めた、あの作品と真逆の発想である。

平成世代の常識すら、部屋の隅のホコリレベルと感じる、令和世代のオタクに、昭和という化石レベルの遺物をクオリティーだけ上げて提供して、本当の意味で成功するかは疑問の余地がある。

何度もいうが、本作品の純度が高く、素晴らしいのは言うまでもない…

ただし、それだけで成功できるわけではない…

連続2クール、しかも2期にも突入している訳だから、スポンサーも資本も潤沢だ…

そりゃそうだ、なんてったってかつての大家の名作だ、金を出せる世代にド直球な連中は山のように居る…

だからこそ、本作は非常に高いクオリティーと完成度を誇っている。

かつてのアニメ化での、遺恨を晴らすような、原作準拠で…

しかし、全体的な後押しが薄い、作品の性質が現行のコンプライアンスに合わないからかはわからないが、イマイチアピールが足りない…

新参世代を引き込む為に不可欠な、宣伝がほとんど成されていない…
とりあえず金をかけて、深夜の枠にねじ込んではいるものの…贅沢なやっつけ仕事というほか無いほど、ほっとかれている…
今日日、面白いかどうかと、成功は「=」ではない…
よくよく考えればそれほど面白くない作品が、商業的に大成功する話しなど珍しくもなんともない時代なのだ。


無論、原作者の意向を蔑ろにするを是としたわけではない…原作至上主義を悪辣に言うつもりもない…

ただし、本作が商業的意義をなし得る大成をなすかと言われれば、難しいと言わざるを得ない。

とどのつまり、何がいいたいかと言えば…

時間が経ちすぎた、ただそれだけが残念でならない。
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