カニ組長

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨うのカニ組長のレビュー・感想・評価

4.7
 出オチタイトルにあなどるなかれ。意外に世界観もストーリーもしっかりした異世界アニメ。
 自販機に転生って話作れるの?という視聴者全般の不安な気持ちを、作者の自販機に対する膨大な知識量と物語上での斜め上な使われ方の発想力で力ずくて黙らせるパワー作劇がこの作品の魅力。トンチキなゴリ押し展開も多いが、なんだかんだで納得させられてしまう。そんな絶妙なバランスを保っているのが、ヒロイン・ラッミスの存在だ。
 スピーカー機能のある無機物の箱に人間性を見出し、周りとコミュニケーション出来るよう通訳してくれる察しの良すぎるヒロインこと、ラッミス。そうはならんやろっと思いつつ、でも自販機の概念がないならこういう反応もリアルなのか?と思わせてくれる絶妙さ。この子と主人公のバディ感がたまらない。
 存在する自販機ならなんでもなれるが、自販機故に自立して動くことは出来ない主人公。怪力故に力が制御出来ず、攻撃も当てる事の出来ないラッミス。それをラッミスが主人公の移動手段となり、主人公はラッミスの怪力の負荷になることでお互いのポテンシャルを最大限活かし合っている様は自販機なのに運命的なロマンチックささえ感じる。冒険を重ね修羅場を潜り抜けることでラッミスが主人公に惹かれていくのも馬鹿馬鹿しくもあり微笑ましくもある。モノローグで主人公が喋っているとはいえ、ここまで自販機に感情を揺さぶられるのは原作者の手腕も大きいところだろう。
 主人公の変身能力も面白い。自販機ならなんでもありという特性を活かし、特殊な自販機がじゃんじゃん登場し、視聴者を飽きさせない。本当にこんな自販機もあるのかと終始驚きの連続だった。
 そもそも、この作品自体、日本という、身近に自販機が存在する国だからこそ誕生した稀有な作品とも言える。一見の価値ありだ。
カニ組長

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