平田一

終末のイゼッタの平田一のネタバレレビュー・内容・結末

終末のイゼッタ(2016年製作のアニメ)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

“西暦1940年

―そして少女たちは世界に挑む”


「ギルティクラウン」「マクロスF」の吉野弘幸さんがシリーズ構成・脚本を手掛けたオリジナルアニメーション。キャラクター原案は「結城友奈は勇者である」のイラストレーターBUNBUNさん。第二次世界大戦時のヨーロッパに酷似した世界を舞台に繰り広げられる大戦記ものであり、魔女と魔法などといったファンタジーものもあり。

パッと見は面白そうな要素の詰まった作品です。

1939年。中欧の軍事大国・ゲルマニア帝国は、欧州の支配を目論見、隣国リヴォニアへと侵攻。翌年の40年、ゲルマニアはアルプスの小国、エイルシュタット公国にもその矛先を向け始め、更なる侵攻を目論んだ。

物語はエイルシュタット公国の公女フィーネと、かつて彼女に救われた魔女一族の末裔イゼッタの再会から動き始める。

文句のつけようも無いほどにBUNBUNさんの絵が良くて、このアニメに特化させたイラスト集が欲しいほど。前評判に違わないミリタリー面も面白い(素人目にもその知識が欲しいぐらいに映えまくり)。世界観も1クールじゃ惜しいぐらいに魅惑的で、これの外伝小説とかがあったら読んでみたいほど。

ですが結論。
全体の話がどうも弾まない。

連続2クール構成で、キャラが記号的じゃなければ、このアニメ、もっと大きな話題になっていたと思う。

特に一番酷かったのが中盤からの魔女ゾフィー。愛していたエイルシュタットの王子に以前裏切られ、処刑された凄惨な過去はまああるんですが、言動が醜すぎて、しかもネタにもなれない始末(こういうのはネタで語れるところが無いとただ醜悪)。

しかも見てくと自分を全く疑っていないのが分かる。

確かに王子は最悪だけど、ゾフィーの方も魔女の力を王子のために迷わず使い(それを常時行使すべきか確認したかも怪しいし)、力のリスクや王子に対する妄信は度が過ぎて、裏切られたあとは一転、終始被害者意識だし、そりゃあイゼッタの祖母さんがああ呼んだ(「裏切りの魔女」)のも分かる。

俗に言う恋に妄信(猛進ともいえるかも)すぎて、あまりに浅すぎる。もっとこの子の人間的なところを知りたかったです。

逆にとっても面白いのがアルノルト・ベルクマン。所謂日和見主義者な上に、自分の命が一番惜しい。そのことを自覚していて、立ち振る舞える人間ですが、このキャラが不思議なことに、血の通いを一番感じる(多分書いてて一番楽しいキャラクターの気がしますw)。怯えもあろうし、悔いもあろうが、それをさっさとひっこめさせる、イゼッタとは別の意味での強さを備えた人間ですし、だからラストまで生き残れたわけが分かる面白さ。また演じる諏訪部さんが本当にピッタリで、こういう憎めないキャラがこの人はピッタリすぎる(笑)。

負けず劣らず主人公のイゼッタも大好きです。一見ゾフィーと同じように猛進じみてるところはあるけど、ゾフィーと違って、魔法の力を手離す強さを最後に見せて、フィーネのために、皆のために姿を消すって選択は、見ててスゴく切ないけれど、スゴく心を打たれました。祖母から魔法を使うことがどれほどなのかをよく考え、考えに考え抜いて、行動するあの姿、まさに主役にふさわしい魅力が詰まっていましたね。

他にももう一人の主人公たるフィーネも毅然とした強さ、イゼッタの身を案じるビアンカも魅力的で、ラストで大きな役目を担ったロッテも癒し役ですし、ベルクマンと水と油なジークハルトも人間臭く、エイルシュタットサイドのキャラは皆魅力的ですね。

前述のように記号的なキャラクターを避けて通り、連続2クール構成ならもっと浸っていたかった。

何とも勿体ないオリジナルアニメーションでした。
平田一

平田一