人間、という生き物について。
なぜこの広大な宇宙で、今のところ地球に住む人間というセイブツのみが「言語」を、そして「知りたい」という、時には実益もない純粋な欲求を持ち得るのか。
地、知、血
地動、知識、血液
サウンドとしての「チ」という言葉に、これだけの物語性を盛り込んだ作者に賞賛しかない。そして、自分はなんのために今を生きているのかという、時に脳裏をよぎらなくもない問いに、すごく優しい答えをくれる作品でした。
地動説って、当時からすると異端的だったアイデアなんだよね。理論的に破綻がなく、かつロマン溢れる「地動説」に対する飽くなき探究心をメインにした物語ながら、星の寿命からすると刹那的な自分の一生が何のためにあるのか、という、個人的な問いかけにも目を配った作品だったと思う。そして、その飽くなき探究心が持つ素晴らしさが、同時に危うさも生むことを、こんなに鮮やかに描いた作品はなかなか稀有だと思った。
人間ってフクザツだ。みんな自分なりの「正義」なり「信条」を持っているけど、発露の仕方はそれぞれ。だからぶつかることもあるし、ときには自分が生み出したその正義なりが、自分の命よりも尊いとすら思っちゃう危うい面もある。
この作品を見てなおさら思ったんだけど、多分人間は、存在する限り争いを生む生き物だ。少しずつ、神が思う「善」に近づくとしても、人の思い込みは時に強すぎる。時代によって左右されすぎる。
知が、どうか血を上回りますように。