平田一

革命機ヴァルヴレイヴの平田一のレビュー・感想・評価

革命機ヴァルヴレイヴ(2013年製作のアニメ)
4.2
“世界を曝く”

10年前の“アニメイズム”枠(MBS・TBS系列のアニメ枠)で4月からオンエア、分割2クール体制で半年間放送されたサンライズ(「機動戦士ガンダム」「伝説巨神イデオン」)制作のオリジナルロボアニメ。“呪い”と“過ち”、“見えざる未来”に翻弄される少年少女と殻に籠って未来を拒む世界と大人が描かれる。2019年に起こった香港デモの影響で中国ではうなぎ上りの評価となった話題から、今なお語り継がれている本作を手掛けたのは、松尾衛監督(代表作「夏雪ランデヴー」)と大河内一楼さん(代表作「機動戦士ガンダム 水星の魔女」)。

ネタ的な要素も孕んだジェットコースターアニメで、初見の時は“何だこれ?”って思っていたのが本音です。ですが今年で10周年、また見ようと再訪したら、ものスッゴく当時と違った見方が出来て驚きです。突然の戦争で混乱する日常や、巨大ロボットの出現で日常が呑み込まれ、見たままの世界じゃないのが明かされていくストーリー……合間に結構アイドルソングのPVみたいな場面が来たり、緩急が凄まじくって、絶対振り落とされそうですが、根底に仕込み続ける“(一つの意味ではなかった)呪い”の気配や恐ろしさ、それ以上に跋扈している隠ぺい主義や秘匿主義。自分本位で隠した秘密のツケが起こって来る展開……アトム・エゴヤン監督の『秘密のかけら』のキャッチコピー、

「秘密を抱えて生きるひとは、いつか秘密に殺される」

を地で行くような展開や話がとにかく待ってます(例で出したのロボットものに無縁なアート系監督w)。

特に一番唸ったのは伝説の第10話(「恋の選挙公約」)。暴走した時縞ハルトに犯される流木野サキが“呪い”の正体をハッキリと知ってしまうお話です。そこについては興味深いテーマ考察があったので、詳しくは「『流木野サキは呪いを受け入れる』(革命機ヴァルヴレイヴ テーマ考察)」で検索を。そこで見えた“呪い”の断片が本当に巧みです。

それも踏まえてこのアニメで感じた“呪い”の定義って、

一種の吸血衝動やフラッシュアイデア(=フラッシュ(閃光)のように思い浮かんだアイデア)を肉付けする覚悟を捨ててるショーコの弱さ、ある意味での保身に走って殻に籠るハルトの逃避、ホントの気持ちをウソで誤魔化し続けるサキの切なさ(この子はホントヴァルヴレイヴで激推しのキャラですよ)と、いずれのキャラもある種の「呪い」にすがって依存してますし、世界も背後に潜むものもみんな「呪い」にすがってる。その姿に今日的なものがダブりまくりです(だから山田ライゾウって呪いをプラスに変えれてる)。乱暴を承知で言うと、今の世界や日本もまさに、ボクもですが決して見えざる“奴隷根性”なるもの、つまり通じる「呪い」にすがり、無自覚傀儡になっている……そういった可能性を考えさせるものがあり、その意味でも先見性があるって結構思ってます。特に第2クールなんか、まさに先取りに感じ、アレはまさにアップデートされた戦い方かと。

上手く書けたが分かりませんが、今では僕はヴァルヴレイヴの大ファンの一人です。ノベライズ3冊未だに残しておいて良かったし、サキとハルトの関係性がやはり大好きでしたね。何より単なるロボットアニメでなかったところも面白く、PSYCHO-PASS もそうだった“先見性”もオススメです!
平田一

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