メランクさん

ウディ・アレン VS ミア・ファローのメランクさんのレビュー・感想・評価

5.0
今作を見なきゃと思った明確な動機の一つは、
ウディ・アレン作品を今後も見るべきか否かを判断したいということだった。

これまで何本も彼の作品を見てきて、
本当に好きな作品も何本もあるし、
ベスト盤のサントラを繰り返し聴いてきた。

しかしミアファローの養子と交際して結婚した事実や、
今作のメインとなる娘への性的虐待疑惑のことを聞いたことはあった。

それなのにそのことをちゃんと知らないで
彼の作品を見ることに違和感が出てきたから
「ブルージャスミン」を最後にひとまず見るのはやめた。

でもやっぱりはっきりさせなきゃと思って、
今作の存在を知り、見ることにしたのだった。


結論から言えば、彼の作品を「見ない」と決めたというより、
もうとてもじゃないが見る気になれない。

こんなやつが自分の行為を全く悪びれず
なんなら作品に落とし込んでるという事実は、
本当に最大限の嫌悪感を抱かせる。

今作はたしかにミア・ファローの側から撮ってる作品ではあるが、
当の被害者であるディランが自らの口で犯行について語るシーンががっつりあり、
また起訴を取り下げた検察官が取り下げた理由を語り、
その2人が最後に再会して話をしてる。

だから自分の娘をレイプした事実は疑いようもなく、
それを否定するどころか金と力を駆使して
ミアやディランを貶める工作を続け、
現在に至るまで映画を撮り続けている。

とにかく感じるのは時代の違い。
このレイプ事件が問題になった90年代初頭の雰囲気なら、
たしかにミアが悪者にされるのも頷ける。
ネットがなくてテレビが絶大な力を握っていた当時だから、
財力、政治力で勝るウディアレンがどうしても強かったんだろうし、
一緒に生活する子どもをケアせねばならないミアには対抗のしようがないというのは、
ものすごくよく理解できる話だった。

そして2014年にもディランは告発をしたのだが、
まだその当時でも世間の反応は鈍かったのが、
18年のMe Tooに乗る形で再び脚光を浴び、
今作の誕生にもつながっている。

この問題をしっかり問題にするために
これほど時代を待たねばならなかったということ。

たしかにスンニとモーゼスがウディ側についてるのは
(とくにモーゼスに関しては金なんだろうなと推測してしまうが)
もしかしたらミアにも問題があったのかもという疑いをもちえるけれど、
しかし幼い娘をレイプすることと
ミアと養子との関係を並べるのはどう考えても釣り合わない。

子どもたちを最優先に考えてウディの挑発に耐え、
映画界から干されながらもたくさんの子どもたちを育て、
社会貢献に身を捧げてきたミア・ファローという女性が
とにかく美しくてかっこいい。
そのことを知ることができたことがよかった。