レインウォッチャー

シークレット・インべージョンのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

2.5
今作では、わたしたちが以前から親しんだキャラクターの何人かが「退場」を余儀なくされる。しかしシーズンが終わった今、はたしてその価値はあったのか、要するにその代償に見合うほどの物語だったのか、は疑問が残る。

序盤のテーマ設定はとても興味深い。ニック・フューリーの再出発だ。
自他ともに彼の老いや衰えに繰り返し言及し、彼の孤立が深まっていく。しかし、過去の果たすことができなかった約束、後悔の念は彼を許してくれず、過激派スクラル人の反発という形になって襲いかかる。

その姿は、どこかこの数年のMARVEL=MCUの象徴にもとれると思った。失速したフェーズ4に始まり、無理なスケジュールや俳優陣・政策陣との摩擦など、内外に問題を抱えつつ迎えるフェーズ5。
一部ではオワコンなどとも囁かれつつ、それでも過去に落とし前をつけて「まだやれることがある」と前を向き立ち上がる…そんなフューリーの姿を見ることができれば、これからのMCU全体の未来もまた応援できるのでは?という期待が沸き上がった。

そんな想いと硬派なポリティカル・サスペンスが絡み合って進行する序盤~中盤までは、引き込まれたし見ごたえがあった。ところが、(今作に始まったことではないけれど)やはり終盤は致命的に下手を打っていると思う。

まず、「地球はいつまでもスーパーヒーローを頼りにできない」と言っているにも関わらず、結局はスーパーパワーに頼った解決方法だった点。
それまでがMCUらしいVFXやアクションに乏しかったから、という判断だったのかもしれないけれど、本末転倒ではっきり興ざめである。

また、今作のヴィラン枠であるスクラル人の指導者・グラヴィクとの確執をまったく解決しなかった点。
グラヴィクはフューリーが後回しにしてきた「負債」の象徴ともいえる存在だったはずなのに、彼との最終的な対話を放棄してしまい、ゴールは丸投げで、いつのまにか妻(彼女にもとある秘密あり)と自分のHOME再構築にすり替わっていたりする。先行き不安…。

後の映画やドラマを語るための舞台設定を設えた?ほかは、少なくとも現段階では何のために語られたのかよくわからないシリーズで、誰の行く末も特に気にならない。

一点、オリヴィア・コールマン演じるソーニャという魅力的なキャラの参入は良かったところ。
本来的な意味でのサイコパスといえる彼女は、ストーリーのケツをたたいてドライブさせることのできる存在だし、敵かな?味方かな?のグレーな立ち位置は今後の展開でも重宝しそう。