1990~94年「モーニング」(講談社)にて連載され、92年に第38回小学館漫画賞青年一般部門を受賞した名作漫画のテレビドラマ版。
文具メーカー「マルキタ」の新人社員で熱血漢の営業マン宮本浩を演じるのは池松壮亮。不器用だけど恋に仕事に邁進するハイテンションな姿で魅力する。
監督・脚本に映画界から真利子哲也。
心の声をナレーションで多用するのは、あまり好きではない。漫画的だし、でも漫画原作だから、それが正攻法なのかもしれないけど…ナレーションでいまの気持ちを代弁できてしまうからねぇ。それを言えちゃうなら簡単だし、現実では内面や、考えてることが見えないから、色んな葛藤をするわけだし…だから悩むのだし。
いまの内面を全部、人物が語ってしまったら、そりゃ、見ている方も分かりやすくていいんだろうけど、それが答えだ!というか…見ている側が想像するだけの余地が残っていないことになってしまうんじゃないか…考えることをヤメてしまうというか…受け手の自由が少ないというのか…
と思いながらも、クソ熱い男である宮本浩には揺さぶられる点が多くあった。
第四話
○大衆酒蔵 酔の助
宮本
「あの娘に逃げて…それからずっと俺の気持ちって俺にしか向いてないんですよ。俺が納得できるかできないかってことばかりで、あの娘に対しては失いたくないって気持ちばっかで…これって俺のワガママで好きとは違うでしょ?!」
田島(柄本時生)
「みさちゃん抱きたないんか?」
宮本
「死ぬほど抱きてぇよ!」
田島
「抱きたい気持ちが、気持ちこそ愛やないか」
宮本
「だったらてめぇー金で抱く女みんな愛してんのか?」
田島
「失言や…」
小田(星田英利)
「じゃぁ宮本宮本あのなぁこう…お前は臆病やねんて…臆病やなのになんかこう欲張り過ぎてへんか?ワガママも結構やねん。逃げるのも結構。なんべんでも女とまぐわってみぃって。気持ちなんて後からいくらでもついてきよるから。気持ちが感じやないと信じられんわっちゅうのはそりゃ…なんかこう臆病な奴の言い訳やなぁ」
田島
「いいかぽんち。人間の気持ちは簡単にわきまえられるもんやないで」
小田
「そんなあの人間のすることになぁ、完全なんかあらへんねんて。そりゃもうしやぁないもん」
宮本
「でも…人間だからしょうがないって、一番ズルい逃げ道ですよね?同じ臆病者だったら、人間だから完全になれるって信じたいです!やってみなきゃわからないでしょ!!」
野次馬(周りの客たち)
「いいぞいいーぞ!」
宮本
「したり顔して悟りすますのやめろジジイ共!」
小田
「でも宮本なぁ…女の気持ちはどないすんのや?」
若かりし自分を見てるようだ。俺も同じようなこと言ってた気がする。そして、周りの反応も同じようなもんやったなぁ…なんか懐かしい…
そして、華村あすか演じる甲田美沙子を抱く。
次の朝…抱かれた後の甲田美沙子の親近感あるバイバイがクソカワイイぞ…この感じは…もうさんざん経験済みかぁ!クッソーぉぉ!
その後、元カレも来るサークルの集まりに行った甲田美沙子はヨリを戻すことに…捨てられた宮本。
会社の受付をやっている甲田美沙子の職場を訪ねる。なにもできず泣きながら帰ってきた宮本。
第五話
○小田課長宅
小田の奥さん友子(ぼくもとさきこ)
「そこまでしといてやでぇ、その女の子を真剣に想ってへんって強烈な理屈やなぁ」
宮本
「本当に好きなら行っちゃいけないし、行ったんならもっと惨めに戻って来てくれって言わなきゃズルいですよ」
友子
「大事にせなあかんのは、会いたいから行ったいう宮本さんのその気持ちやあらへんの?」
宮本
「気持ち通りに生きることって誇れることですか?気持ちのまま何かするのってただのワガママじゃないですか?」
友子
「せや。人間ってみんなワガママやで」
宮本
「ワガママって知ってて自分を許すのってズルくないですか?」
小田
「損な性格やねぇ…」
友子
「すごいわ宮本さん。自分の得意なること全部許せへんのやろ?」
宮本
「ただ…今回のことで、俺はそんなこと言える立場じゃないって、身の程わかっちゃったし…」
小田
「あーほー。お前が気づかなアカンのはこういうことやろ?…自分しか愛されへん究極のエゴイストー!それがオマエやん。ドンピシャやろ?」
友子
「残酷な人間やろー?なぁ?」
宮本
「俺…どうすればいいですか?」
小田
「知ーらん…。オマエ前に言うとったやろ?人間だから完全になれるって?そんなん無理やん。人間生きとること自体ワガママ通しとんねんから」
宮本
「だからって自分を甘やかすのは卑怯でしょ?」
小田
「あーほー。せやからオマエの言うことなんか所詮程度の問題やっちゅうねん。気持ちに素直に生きたいねん言うてよー。またぐらパックリ広げとるノーテンキの奴の方がオマエよりナンボも大人やし、社会の役にも立っとるわ。考えとることより気持ちが大事と思ったらどや?身の程知ったんやったらいい機会や。割り切ってな、小狡く大人になる努力したらええわ」
友子
「言い過ぎやね」
小田
「オマエがそのクソ意地とか、クソこだわり捨てへん限りな、人も愛せん仕事もできへん。この先ずーっと同じことの繰り返しや」
宮本
「そりゃもうケチついちゃった意地ですけど、それまで取り上げられちゃったら、俺なんかもう何にもないです。何にもありません」
あれ?宮本と同じことオレ今だに言われてる…!いい歳して…どないしよ?
第7話
○亀戸天神社
宮本と、蒼井優演じる中野靖子。
中野
「あのねぇ、宮本くん。自分に自信のないやつは、自分のことしか考えられないんだって。余裕ないんだから。自分に力のないやつほど誰かと一緒にいるとか協力してるとか言い出すんだってば!そんなのひとりで戦えないやつが言っちゃいけないでしょ?違う?」
第9話
○さくら出版・資料室
コスゲと宮本
コスゲ
「仕事ばっかしてると女とか?デートの約束とかよー。大丈夫なの?」
宮本
「ぼく彼女いないです」
コスゲ
「だったら、なおさら仕事に夢中になってる場合じゃねぇだろ?」
宮本
「仕事ぐらいできなきゃ駄目なんです。ぼくが女でも、いまのぼくには惚れないですから」
これねぇ…全くの同意見なんだよなぁ。
宮本、共感できるぞ!
○サウナ
小田課長と宮本と神保。
小田
「仕事にせよ女にせよ、一生懸命やるのはそりゃええことや。せやけど社会に出たら大切なのは結果や。一生懸命やっとるのに結果でぇへん言うて駄々こねるのは、ガキだけや」
宮本
「勘違いしないでくださいよ。うまくいかないことに駄々こねてるんじゃなくて、中途半端に終わることに駄々こねてるんです。このまま終わったらオレ…きっと頑張ったってことで満足しちゃいます。そんなもんクソ喰らえです。オレは結果を噛みしめたいんです。勝ちでも負けでも…」
新卒のこの宮本と同じように、オレはガキなんか…納得できねーぞ!くっそー!オレには、やっぱりサラリーマンは出来ねえ!
文具メーカーに1年2カ月勤務していたという原作者の新井英樹。
「(入社)半年で無理ってなった。秋ぐらいにはマンガ家をやろうと思っていた。会社員としては本当に失格で、皆さんの前で何をしゃべっていいのか分からない。でも『宮本から君へ』を描いた一つの理由が『宮本から君へ』を読んで会社を辞めましたっていう人と出会いたいだった」
世間一般の常識の範囲内にいる人間は、その範囲からこぼれ落ちている人間のことなんか理解できないだろうし、理解するつもりもないんだろう。上から目線の説教くせぇ物言いには虫酸が走るぜ!
「オマエがそのクソ意地とか、クソこだわり捨てへん限りな、人も愛せん仕事もできへん。この先ずーっと同じことの繰り返しや」
クソがぁ!さらに「聞き耳を持たない」までオレは言われたぞ!そいつ、「オレは一度飲み込むけど、オマエは聞こうともしないじゃん!」だって!クソがぁ!一度飲み込む人間が、離婚してんじゃねえか!テメェは嫁の何を飲み込んだんだよ?飲み込めねぇから離婚したんだろうが!偉そうに分かったような口聞いてんじゃねぇよ!
宮本から君へ。
俺から宮本へ。