サンタフェ

ONE PIECEのサンタフェのレビュー・感想・評価

ONE PIECE(2023年製作のドラマ)
3.7
実写映画的な構成の実写ドラマ。

かなり期待していた本作。結論から言うと「よかった」という安堵感と、「結局実写映画的な実写化かぁ」という失望感が半々に終わりました。

良かった点。

映像がとても素晴らしかったです。セット、衣装が原作を再現しようという意欲が感じられ、ONE PIECEの世界を楽しめました!

ハリウッドにありがちな、リアル志向で例えば赤髪ならスコットランドとかオランダ系の役者さん風…みたいな、デザインを現実の民族モチーフに落とし込むタイプのルックではなく、よい意味でコスプレっぽかったのが印象的でした。原作がそうだから仕方ないといえばそうですが、意味もなく色がカラフル。髪が赤いは髪が赤い以上の意味は持たない。デザインに現実の背景を感じさせない。そういった開放感はハリウッド作品じゃなかなか感じられません。

悪かった点。

私が今回のONE PIECEに期待していたことは「ドラマである意義」でした。どういうことかというと、十分に尺を取れるためにシナリオの再構成の必要がなく、原作のまま綺麗に実写化できることです。

一般的に漫画(特にジャンプ作品)の実写化は難しいと言われていますが、私はその最大の理由は連載作品を映画という2時間のフォーマットに収めることが不可能だからだと考えています。見た目やアクションなどは、現在のアメコミ映画を経た映像技術では特に障壁に感じません。

しかし、今回のONE PIECEは結局はほぼ再構成の実写映画式のドラマ化でした。ここの失望感がかなり大きかったです。個人的に再構成がプラスに働いたのは元々の原作がかなり薄い1話くらいで、あとは全て原作の魅力が著しく損なわれてしまったと感じました。特に2話のバギー編などは、完全に原作のエピソードとしての素晴らしさは一切ないと感じてしまいました。

また、もう一つの大きな不満点が、原作ONE PIECEがバトル漫画という闘いがメインのジャンルにも関わらず、アクションシーンには原作の殺陣シナリオがほとんどなにも反映されておらず、決め技が同じ程度であることでした。

つまり、アクションはほとんどゼロから構築されているわけですが、ただ純粋にアクションシーンの魅力をオリジナルアクション映画やドラマと同レベルで作り込めていたか、といえば、そんなことはありません。というか、元々が力の配分として無理でしょう。唯一原作に沿ったゾロvsミホークは原作通り名バトルに仕上がっていました。

実写化の度に議論される、なぜ素直に原作を再現しないのかというテーマ。漫画を実写に変換する際に実写向きの演出に変更するという理由はわかります。例えば、本作の「強いやつは技名を叫ぶんだ」という台詞の追加はよい変更でしょう。ただし、変える必要のないところまで全てゼロから再構成する意義を私は全く感じません。結局キャラが有名な2流作品になってしまうからです。

もし、私が今までほとんどゼロから再構成するハリウッド式のアメコミ実写映画しか観ていなかったら、それでも実写化というものはこういうものと納得できていたかもしれません。しかし、今はもう邦画にはキングダムと東京リベンジャーズという原作をそのまま実写化しようという気概に溢れている実写化があります。しかも、映画という形式で、です。

日本人はTVアニメが原作通りにアニメ化することで圧倒的にクオリティを上げたことを知っており、実写もまさに今邦画で原作通りに実写化することの有効さが示されつつあります。そのタイミングでドラマという連載作品を実写化するに最高の媒体で実写化したにも関わらず、古き良きハリウッド実写映画化のような構成の実写ドラマがお出しされたのは、素直に残念と言わざるをえませんでした。
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