ルサチマ

シジュウカラのルサチマのレビュー・感想・評価

シジュウカラ(2022年製作のドラマ)
4.0
蓮實重彦による青山真治への感動的な追悼文「青山真治をみだりに追悼せずにおくために」の中で青山さんの教え子である大九明子への言及がなされている。

『新潮』掲載の追悼文は見返りを求められぬ青山さんへの恋文のようでもあり、残された者への檄文のようでもあり、漱石の「記憶して下さい。私はこんな風にして生きて来たのです」という一説を彷彿とさせるような蓮實重彦自身の独白のようでもある。
無名の学生であった青山真治が書いたレポートを蓮實重彦が読み、その出来栄えに驚き、そこに書き込まれた顔もわからぬ著名を忘れまいと、当時のレポートを保管していたという感動的な記述を目の当たりにして、『チャーリーとの旅』の中でスタインベックが旅役者から特別に見せられた美しき手紙のエピソードを想起した。

類稀なる才能を持つ作家・批評家にのみ許される見返りなき(が、しかし、いつか交差する)人間関係の創造に憧憬の念を抱かずにはいられなかった。
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