レインウォッチャー

ミズ・マーベルのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

ミズ・マーベル(2022年製作のドラマ)
3.0
ふやけちゃったチャパティー。

主人公カマラはとてもキュートで、魅力的だと思う。アベンジャーズ、特にキャプテン・マーベル大好きでクレバーなちょいぽちゃ・ムスリム・ガール。
その明らかに陽性なキャラクターとハデすぎず柔軟な能力は、これから他のヒーローたちと合流してもきっと良いガス抜き的な存在として活躍してくれそう。

ティーンエイジャーものということで、トム・ホランドのスパイダーマンシリーズが大好きな自分としては期待も大きかった。
事実、第一話は最高!色鮮やかなカートゥーン風のイラストや書き文字が日常風景と同居するポップ&ワンダーな画面は、若く軽やかなヒーローオリジンの幕開けにぴったりだった。

しかしその後は盛り上がりきらず…というか、ずっとフォーカスが定まりきらなかったと思う。
ティーンらしい青春物語や、現代ムスリムに関するイシューへの言及、そして能力のルーツ探究と覚醒といった要素が拡散しすぎた結果、散漫なまま半端に終わってしまった印象だ。6話かけたのに、2時間映画よりも薄味な不思議。

何より残念だったのは、せっかくの「アベンジャーズオタク」という設定が中盤以降あまり生かされなかったことだ。このために、カマラの存在が壁一枚遠くに行ってしまった。

カマラの出発点はそこにあって、かつわたしたち観客との何よりの共感ポイントとなり得る点なのだから、もっとうまく使って欲しかったところ。
彼女のアベンジャーズ愛や知識が功を奏してピンチを切り抜けられるとか、心の中のキャロル・ダンヴァースと同期して挫折から立ち上がるとか…あってもよかったんじゃない?

まあこのあたりは『マーベルズ』に託すとして、あと良かったところとしては音楽使いがある。
パキスタンやインドにルーツを持つアーティストの楽曲が全編に渡って使われており、かつ、いわゆる民族音楽ではなくて現代的なヒップホップ / R&Bが中心になっているところが今作のミスティック&フレッシュなトーンを決定していると言っても良いと思う。

耳に新鮮な楽曲が多くて、ライブラリがたいそう潤った。中でも2話でカマラがトレーニングするシーンで使われたKrewellaの『Goddess』はヘビロ。
Spotifyには公式のプレイリストがあったりもして、聴いて歩けば目の前が『ミズ・マーベル』の世界に早変わり。