きみどり

80日間世界一周のきみどりのレビュー・感想・評価

80日間世界一周(2021年製作のドラマ)
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原作小説(の、子ども向けダイジェスト)をボロボロになるまで繰り返して読んでいたのを懐かしみつつ鑑賞。

小説のフォッグ氏は、「お湯の温度を華氏で2°F間違えた」だけで使用人をクビにするという、パワ&モラハラであり、海外旅行を経ても他国に興味を持つこともなければ、心境の変化がいっさいない英国紳士として描かれている。
もちろん2020年代のいま、そんな人物やそれを良しとする社会を映像化するわけにはいかんので、そこはそれ、相応にアレンジが加えられていた。

おそらく雇用問題は重要とみなされたのか、本作のフォッグ氏の執事はお湯の温度どころかお茶のお盆を運ぶのもおぼつかないお爺ちゃん😆で、従者パスパルトゥはハンサムな黒人青年。野心家の若い女性も旅の仲間に加わる。

インドを通過する際には植民地の過去を無視するわけにはいかないし、アメリカ横断時は人種問題が絡んでくる。
それぞれ、かなり無理のある理想主義的かつアクロバティック(=都合良すぎ)な処理がされてるので、時折り脳内に???が飛ぶんだけど…。
でも、ヴィクトリア朝の古典文学をそつなく映像化することは、今や80日間世界一周よりもはるかにプロジェクトXになってるなあと思った。脚本家も監督も頑張ったよねえぇぇぇ(お前はいったい何様ですか)。

原作小説の方で大好きだったのが、蒸気船で移動中に時間が燃料が足りぬ、ということで木造の船体を解体して燃やしつつ目的地に滑り込むというスリリングなシーン。このドラマでは、大怪我した子どもを助けるために列車🚃を燃料にするというアレンジになってました。

そう、我を通すために大勢の人間をこき使って旅行していた19世紀のブリカス紳士フォッグ氏は、21世紀ともなると自己犠牲を厭わぬ英国紳士になっていた。

相変わらずデヴィッド・テナントが素晴らしく、孤独で偏屈な富豪が、仲間との珍道中を経て人間的成長するというベタな展開を難なくこなしてた。
原作厨としても文句なし。楽しかった☺️
きみどり

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