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星新一の不思議な不思議な短編ドラマのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

 まだ全部見てませんが。

 主に仕事からくる疲労およびストレスにより映画を見る体力が急速に失われ、おまけに文章も書く気が失せていたのだが、星新一というサクッとお手頃SF世界がだいぶ気分をマシにしてくれた。ので、感想。

 星新一のショートショート、恥ずかしながら読んだことがまだない。しかし星新一を知っている。それは昔NHKでやっていた「星新一ショートショート」というアニメーション作品が所以だ。色んなアニメーターが色んな表現で摩訶不思議なSF作品を作り上げるそれらは、毎度毎度釘付け状態で見入っていた。今wikiで調べて見ると当時のキャッチコピーが「大人のための童話」だったと知る。が、はっきり言って「子供のための寓話」であったように思えて、大人な要素はわりに少ないと思う。特にアニメーションはファンタジー要素を強めるし、視覚的によりSF世界が表現しやすい。にしても、再放送してくれないかなぁ。

 と、前回大ハマりした星新一作品は、今回はそうそうたる顔ぶれでシリアスな現実味を添えて大人風な仕上がりとなっている。こうして真に「大人のための童話」というコンセプトが確立したように思える。星新一に触れるにあたり、子供の頃は想像力をより広げてくれて、大人になって疲弊した時に、またふと空想させる力を与えてくれる。実写での星新一作品は、演者の雰囲気もあってか思ったよりビターな雰囲気で良い(ビターといってもほんのりぐらいです)。そして、星新一作品が起こすのはわずかな教訓以上にその”異常な状況”の面白さなんだなぁと今回思えた。それは、ある意味現代の大人の逃避する先とも言える。社会から逸脱することさえ厳しいまなざしが向けられる今、”異常な状況”は抑圧され無意識下で密かに期待され、待望されるものとなっている(それが良くない方向にいくと戦争という熱狂に走ってしまうのだが)。そのガス抜きじゃないが、星新一作品はその期待を超える”異常な状況”を用意してくれる。わずかにメッセージがありそうだが、例えばボッコちゃんのラストで全員が毒を飲んで死ぬのも、愛の寓意というよりは期待された”異常な状況”が現前となる感じに近い。極まったその状況に「おお!」となる。今回のドラマはまさにそれの連続だった。ちょうど出勤前に見ると丁度よくその日を楽しめる、SF的に。
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