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ウ・ヨンウ弁護士は天才肌のhorryのレビュー・感想・評価

ウ・ヨンウ弁護士は天才肌(2022年製作のドラマ)
4.5
色々考えながら見た作品でした。
配信が始まる前に思っていたのは、自閉スペクトラム症でギフテッドというステレオタイプなキャラクターの危険性。インタビューでウ・ヨンウを演じることに長い間迷ったとパク・ウンビンが話しているように、とても難しい役柄だったと思う。それを分かった上での制作であって、注意深さも作品から感じたけど、ネトフリが「ウヨンウかわいい」みたいな番宣をしていたのではガッカリ。この作品が描いたのは、ウヨンウのかわいさだけでなく、障害者にとっての社会的な障壁だったはず。
そして、自閉スペクトラム症である主人公が直面する困難を描くだけでなくて、ウヨンウの視線で社会の不正義、不公平を照らしたことも意義深かったと思う。

たとえば、ウヨンウは抜群の成績であってもなかなか就職できなかった。大手弁護士事務所ハンバダに入れたのも、他の人と同じ経緯ではなく、ある種のコネ。コネ入社は不公平だから、同期の腹黒策士クォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)は怒りをあらわにしている。
けれど、成績優秀なのに就職できないという差別が先にあり、障害を持つ娘の父(チョン・ペス)はコネであっても就職できるチャンスを見逃せなかった。クォン・ミヌが言った「ウ・ヨンウが弱者? 錯覚ですよ」と非難は、社会的弱者が優遇され、マジョリティが逆差別を受けているという主張そのままで、こうした「差別」をめぐる受け止め方の違いを色々なエピソードに入れ込み、多面的に描いている。

先輩弁護士で、ウヨンウの言動を諌めつつ対等に仕事をするチョン・ミョンシク(カン・ギヨン)、大学からの同期で厳しいことをウヨンウに言うけれど、「春の日差し」のようにウヨンウを暖かく照らすチェ・スヨン(ハ・ユンギョン)。彼らが、優しく親切な人だけの描かれ方でないのも良かった。

もう一つは、ウヨンウと恋愛をするイ・ジュノ(カンテオ)。「ある日、私の家の玄関に滅亡が入ってきた」ですごく印象的だったのだけど、ネットで「有罪男」と言われるのも分かるぐらい、愛すべきキャラクターでした。とても丁寧に演じていたと思う。

ただ、気になるところもいくつかあって、EP.2のレズビアンの描き方はげんなりしたし、脱北者の母親の描き方もイヤな感じが残った。

とはいえ、裁判の内容も、ジェンダーによる差別が入った不当解雇(それによる女性の分断)の話など良いものも多かったし、なにより、ウヨンウが最終話で言った「これが私の人生」「私の人生はおかしくて風変わりだけど価値があって美しい」という言葉を、作品そのものが示しているのが良かったです。
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