原作のプロットが、やや簡素化されているものの(サー・マグナス殺害事件の目撃者の省略とか)カササギ殺人事件を映像化すると、こういうストーリーなんだなというのがとりあえずわかる出来にはなっている。
原作は作品内作品が完全にキャッチコピーも含めて本編の中にすっぽりと収まっているのに対し、本作はクロスオーバーで表現している。本編と作中作の切り替えの部分で多少混乱はあるかもしれないが、この構成のせいでかなり物語がわかりやすくなったというか簡素化されてしまっていると感じた。
「メメント」を時系列順に観たらわかりやすいけど簡素な感じになると思うが、本作の感触もそれに類するものだ。やや味けない。
ドラマオリジナル要素として、2つの本編を探偵アティカスピュントに橋渡しさせている。これは成功しているように思う。
素人探偵のスーザンが独力で事件を解決するのは説得力がないが、この演出のお陰で「作中作でのピュントの行動が、現実世界の原作者アランコンウェイ殺害事件の謎を解く鍵となっている」という本作の入れ子式の構造が、まぁわかりやすく自然にスーザンを事件解決に導くという演出で視聴者にわからせてくれるようになっているからだ。
作品を何度も読み込んだ編集者のスーザンだからこそ作中のヒントに気づくことが出来た、という芝居をビジュアライズしたわけだ。
この副産物としてピュントとスーザンの個人的な関係性が誕生し、ドラマオリジナルのラストに結びつけている。
それはそのまま、作者に嫌われ名前にとんでもないアナグラムを仕込まれた不遇のキャラ、ピュントへの救済措置にもなっている。
ヨルガオ殺人事件の映像化も期待してます。