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エルピス—希望、あるいは災い—のmのレビュー・感想・評価

4.5
やばい最高すぎる。
脚本の渡辺あやさんと、この作品への出演を決めたお芝居鬼うま出演者の皆さんへ拍手喝采。

一縷の望みに期待しては絶望の底を見る。
何度も何度も馬鹿みたいに同じことを繰り返す浅川と岸本は、しんどそうに見えるのにとても眩しかった。

本当はとてもシンプルなことも現実ではすごく複雑で。その複雑さを前に思考を停止させたまま生きていたのが岸本だったのだと思う。たぶん岸本は、そういうことを考えなくても生きていける強者側の人だったから。
蓋をしていた過去や後悔と再び向き合い始めた時から、岸本は浅川の「わかりやすさ」にずっと救われていた。
真実を追いかけ、間違っていることは間違っているのだと訴える浅川の言葉は、とても簡単でわかりやすい。
事実は複雑で、願いは簡単なものなんだろう。

そして浅川もまた、人としての何か大切なものを諦めかけた時、目の前にいた岸本のことを信じられるということに支えられていた。
希望とは、信じられるということ。

飲み込みたくないものを飲み込みすぎてずっと苦しんでいた2人が、もりもりと牛丼を食べるラストが本当によかった。
たとえ難しくても、誠実に生きたい。
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