わさび姫

軍港の子〜よこすかクリーニング1946〜のわさび姫のレビュー・感想・評価

3.5
今日一君役の男の子の透明性のある演技が
素晴らしく、強く印象に残った。

戦後の過酷な境遇の中でも、
亡き母の言葉を大事に抱き、
芯はそのまま生き抜いていく強さ。

戦後の孤児らや、
いわゆるパンパンと呼ばれた女性たち。
戦場に駆り出され御国の為に戦った
はずなのに、敗戦後は世の中の常識が
ガラリと変ってしまい怨みを持ち
続ける兵士。失った脚は戻ってこない。

皆にそれぞれの事情・悲しみがある。

あの戦後の混乱を想像すると、
戦後しか知らぬ私の胸さえ
締め付けられそうになる。

作品中、ある俯瞰の眼を持つ孤児が、
「お前がアメリカを憎み続けても
彼らには痛くも痒くもないんだよ。
お前のような負け犬根性丸出しなのは
むしろ彼らにとっては支配しやすいんだよ。
それならば、奴らを利用して
生き抜いてやる方が自分の将来の
ためになるじゃないか!」
と言ったような内容の言葉を主人公の
少年に言い放つ。

私も少年同様にハッとさせられた。

ただ執着を持ち続けるだけでは
なんの解決にもならないのだ。

起こってしまったことは
変えられない。
一時的に気分を害することが
あってもいい。
それが自然な感情なのだから。

でもそこで立ち止まったまま
憎み続けるのは、まさに相手の思う壺。

事実を受け止めつつ、受け流し、
その執着を捨て去ること。
先を考え、自分は振り向かず前進していかないと。
別の道を歩み続け幸せを見つけた方が
自分のためであり、かつ「最高の復讐」となる。

そんな事を再確認させられた。

私も一時だが横須賀に住んでいた時期が
あったので、横須賀のたどった歴史を
一部垣間見させてもらったような
気分になった。

やはりその地で先祖代々育った方々は、
駐在米兵に関して未だに複雑な感情を持ち続けていらっしゃるな、
という空気感を、新参者の私は感じた記憶をふと思い出した。
わさび姫

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