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マスターズ・オブ・ザ・エアーのSGRのレビュー・感想・評価

3.6
ずっと焦点が定まらない群像劇で語り口が中途半端に感じたけど、キャストの良さと潤沢な予算を感じる映像だけで不思議と退屈せずに観れた。最終話と同じ日に配信されたドキュメンタリーを見たら、本当にほぼ事実を時系列順に描いていたのがわかって納得。ただ明らかに語り手としてクロスビーが主人公であるべきところを、あまりキャラクターとしてドラマもなくオースティン・バトラーがただカッコいいだけのバックが前面に出ているところなど、ストーリーテリングには疑問。

バックに1番感じた事だけど、全体を通してもあまりキャラクターたちの苦労や苦悩が伝わって来ないのが気になった。もちろん空中戦での壮絶さや簡単に命が失われるシーンはあるんだけど、仲間を失って喪失感のあるシーンが少なかったり、基地では普通に酒を飲んだり療養所に行かせてもらえたり…(そのアメリカ空軍ならではの特殊な状況が見れるのが醍醐味ではあるのだが)

Appleの予算を使って当時のアメリカ空軍を正確に描いた作品としての意義はあると思うけど、ヒロイックに描き過ぎている(バックとイーガンをクロスビーよりも前面に出すのが象徴的)のと結局反戦ではなく「ナチスが悪い」以上の事を言っていないのは残念。

あとご本人エンドロールやポスターには出すくせにほぼ黒人兵の話が描かれないの酷いと思った。クロスビーの回顧録だからそもそも出ないのかもしれないけど、だったらポスターやOPに入れる必要ある?『セックス・エデュケーション』のエリック役でドクター・フー主役にも抜擢されてるイギリス人のチェティ・ガトゥがあんな数シーンのために出演した意味とは!?(ロケ地の都合かバリー・コーガンなどイギリス、アイルランド系俳優が多い)

キャリー・ジョージ・フクナガが監督の前半は純粋に映像的に見応えがあり、その後に期待もしていたのだけど…。
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