酔狂侍

マスターズ・オブ・ザ・エアーの酔狂侍のレビュー・感想・評価

3.6
AppleTv独占配信で、第二次大戦の欧州を舞台にしたアメリカ爆撃機部隊の史実を描いた戦記ドラマ。
スピルバーグとトム・ハンクス製作による、一連の第二次世界大戦モノの最新企画にあたる。

予告編でも明らかだが、もはや、Webドラマでしょ?の潜入観念を吹き飛ばす、恐怖すら感じる迫力の空戦シーンが毎話展開。
できる限り大きな画面と、リッチな音響で「映画」を見るように鑑賞したい。
群像劇だが、役者だけでなく、彼らの相棒であり、命運を握る機体、B-17という重爆撃機は、このシリーズのもうひとつの主役だと言っていい。
エンジンが3機止まっても、帰還できるほどの信頼性と、攻撃力を持った空飛ぶ要塞。
しかし、おびただしい数の敵戦闘機の待ち伏せに合うなど、無理ゲーな作戦の数々で、大損害と、当初の乗組員のほとんどを失う戦闘シーンにおいて、主役は、この機体そのものなんじゃないかと本気で思えてくる。
また、中盤から、撃墜されて脱出、ドイツの捕虜になった組、レジスタンスに助けられて、帰還を試みる組、引き続き、空で戦う組のように、主要キャラの運命が分かれ、同時並行的にそれぞれのドラマが進行していく。
登場人物の多さについていけない感じの序盤に対して、どんどん戦死して、キャラが絞られていく後半。
シリーズの話数と共に、キャラの数と、作品を支配する雰囲気が変わっていくところにも注目して欲しい。

ラストには、主要キャラそれぞれの戦後を説明するシーンが用意されていて、俳優陣も実在の人物に似た雰囲気の役者がキャスティングされていたことに、気付かされる。

アメリカの欧州参戦から終戦までを、共に見届けるかのような全9話。

戦争映画やドラマのジャンルは、これまで、どちらか一方を完全な正義にして、勧善懲悪的に描いてきた作品が多かった。

しかし本作のアメリカ兵士たちは、過度にヒロイックだったり、ドラマチックに描かれているようには感じられず、割と淡々と展開するこのシリーズに、没入感とか感情移入を期待すると、むしろ、ちょっと物足りないかもしれない。
しかし、これが実話のドラマ化にあたって、敢えて過剰に美化することない様に注意深く演出された結果だとしたら、それは、国境なくあらゆる国と地域の視聴者に向けて、世界で同時に配信されるサブスク時代の制作姿勢によるものである様な気もして、興味深かった。
酔狂侍

酔狂侍