小川勝広

エクスパッツ ~異国でのリアルな日常~の小川勝広のレビュー・感想・評価

4.0
監督と脚本家は、
別の人がいい、
基本的にはそうする。

が、

同じ方がいい成功例。


歓迎光臨
オソセヨ
多謝合作
heart of glass

複雑な、
人と人と人の、
一歩一歩または半歩、
文化の差、
言葉の違い、
微妙なズレを丁寧に描く。

一歩一歩は後退、
半歩は前進、

芝居もうまくいっている。

何もいいことなんて、
起きなさそうなのに、
おもしろいいやおもしろくないがおもしろい。

いやなことがつづく比較文化研究、
フルーツ・チャンが、
香港を舞台に撮っていた作品や、ポール・ハギス、
イニャリトゥ作品、
そして『ニューオーダー』を思い出した。

監督が、
どういう意思で演出しようと関係ない、
脚本家が、
どういう意図を込めても関係ない、
観客と作品の化学変化がすべて。

といえる作品。

編み物のように、
繊細に心と心を紡ぐ緻密な作業が必要なので、
観る人の生まれ育ち文化教養、
タイミング、
状況によって何色にでも、
輝いてるようにも見えるし、
濁っているようにも見える。

観客の数だけ、
見方、感想、評価がある、
しかも、
それがおもしろい好例の作品。

小説の構造でいうと、
エンターテインメント的なメインプロットが敷かれていて、
サブプロットが並行するような直木賞作品的展開ではなく、

中心の人、事に、
それぞれの登場人物が蜘蛛の巣のように絡み合う芥川賞的作品。

ちなみに、
映画やドラマでは、
芥川賞的展開は小説と比較すると、圧倒的不利。

理由は、
小説の読者は行間を、
文字通りではない想像が可能。

映像は、
写っている事がすべて、
ゆえに、
退屈になりがち。

本作も、
退屈という観客も少なからずいるだろう。

【蛇足】

西洋人と東洋人であっても、
宇宙人と地球人であっても、
美女と野獣であっても、
犬と猿であっても、
ゴールデン夫婦であっても、
ロジックと思いやりを、
比べると、
おもいやりがだいじ。
正義よりもいのち。