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エクスパッツ ~異国でのリアルな日常~のmaoのレビュー・感想・評価

4.0
フェアウェルのルル・ワンが監督脚本、製作総指揮と主演を務めるのはニコール・キッドマン。香港が舞台の女性3人が織り成す逃れられない運命の話。ある日加害者と被害者の立場になり、人生が大きく変わる。

香港の湿度と登場人物達の心理的な複雑さで観てるこちら側までも汗ばむような、終始息苦しい展開で少しでも救いがないか毎週配信楽しみにしてた。
日々目にするニュースで事件の被害ばかりに目がいって、自分が加害者側に立って考える事ってあまりないよなと。そして被害者の事を考えてもやはり自分が被害に遭うとは常日頃考えられないし、結局当事者になった瞬間からしか自分の事とは思えないた。悲しいけど他人事。けどこう言ってられるのも、自分がそういった理不尽な状況に立たされてないからだよなとか本当頭グチャグチャになった…。

この作品では、旦那の赴任先についていく妻、望まない妊娠をする女性、旦那に不倫される妻、フィリピンから出稼ぎに来ている家政婦等々色んな立場の女性が出てくる。ルルワン監督は、それぞれが孤独を抱えながら少しでも状況を変えようともがく女性を描くのが丁寧で上手い。もちろん演者も。

生きている限り人はいつ加害者や被害者になるか分からない、どう抗ってもあの時この選択をしなければという後悔に苛まれ結局受け入れていくしかない。前向きに生きよう!というメッセージより、苦しみながら少しずつ起き上がる女性達の姿にゆっくり一歩ずつ生きていこうかと思えるラスト。
あまりにゆっくり進むストーリーにつまらないと思う人もいるかもしれないけど、誰かにとって心が軽くなる作品になればいいなと思う。私は好きです。
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