ノラネコの呑んで観るシネマ

スロウトレインのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

スロウトレイン(2025年製作のドラマ)
4.6
いやー面白い。
やっぱ、実力者は外さないわ。
脚本・野木亜紀子、監督・土井裕泰の「罪の声」コンビの作品で、星野源も出ている。
鎌倉に住む編集者の松たか子、多部未華子、松坂桃李の三姉弟が、事故死した両親の23回忌を終えて、江ノ電に乗っている所から物語が始まり、奔放なキャラの多部ちゃんが、突然「釜山に行く」と言い出したことから話が動き出す。
異なる年齢で突然の喪失を経験したことは、三人の心に大きな影響を残していて、それぞれに葛藤を抱えている。
三人だけで生きて来たので、意識しないうちにお互いに気を使いすぎて、それが人生を進める障害になってるんだな。
特に下の二人は、幼い頃に両親を失ったことが隠れたトラウマとなって、人生が刹那的なものに見えている。
今が幸せでも、突然大切なものを失うかも知れないという、潜在的な恐怖心があるんだな。
三人がたどったちょっと不器用な人生が、ゆっくりと走る江ノ電に比喩される。
そして松たか子が作っているのが、「盆石」の本。
盆石とは、お盆の上に砂や小石で枯山水を描くもので、どんなに美しくても永遠には残らないことが、変化し続ける人生の諸行無常を象徴する。
鎌倉を舞台とした姉弟の日常の物語は、ちょっと是枝監督の「海街ダイアリー」風味もあり、なかなかに味わい深いヒューマンドラマだった。