「苦労しなさい、サボらないで」
鎌倉で暮らす葉子、都子、潮の3姉弟は、両親と祖母を事故でいちどに亡くしてから、3人で肩を寄せ合い生きてきた。しかしある日、次女の都子が突然仕事を辞め、韓国へ移住したことがきっかけとなり、ひとりひとりが自分の人生と向き合っていく。
〝ひとり〟と〝寂しさ〟を見つめるドラマ。
観る人によっては、このドラマは退屈かもしれない。良い俳優使って、脚本も今っぽい感じだね、で感想が終わる人もいると思う。だけど、あたらしい年の始まりにこの物語を送り出すことの意味を考えたとき、わたしは泣き出しそうになった。
長女の葉子が、弟妹に「大切な人に対して、誠実であること」を説くシーンが何度もある。サボるな。曖昧に流すな。言葉にせず分かってもらおうと思うな。どれも決して聞き流してはいけない言葉だ。
わたしはここで、愛してやまない漫画「違国日記」の、槙生ちゃんと醍醐の会話を思い出した。
醍「わたしらだって喧嘩なんかしたこと一度だってないけど それでもなんの努力もせずに友達でいたわけじゃないじゃん」
槙「努力を⋯⋯⋯⋯しなきゃいけないのか」
醍「いけないんじゃないの」
槙「しんどい⋯⋯」
醍「⋯⋯そのしんどい努力をしなきゃいけないんじゃないの」
醍「⋯それがさ それが 心を砕くっていう言葉のとおりなんじゃないの」
わたしたちが誰かを深く愛したとき、そしてその誰かが自分の未来にいてほしいと、自分もその誰かの未来にいたいと強く願ったとき、醍醐の言葉を借りると、「心を砕く」覚悟をしなければいけない。分かってもらうために、分かるために、言葉を尽くさなければいけない。分からなくてもいいと認めるためにも強さは要る。どんなに好き同士でも、100%気楽な関係なんてないのだ。
誰だって衝突するのは怖いし、幸せが崩れ落ちる可能性を案じると踏み出せない。それでも、目の前にいるたったひとりの大切な人と自分とのことを、もう少しまっすぐに考えようよ、と思う。同じように、自分のことを本気で考えてくれる相手の心を、考えようよ。
わたしも恋人との結婚を前提にした同棲の話が進んでいるところだが、自分自身の体調などが原因でわりとネガティブに考えているから(恋人にも、どうしてもそう考えてしまうという点は共有済み)、この物語はかなり刺さった。
わたしは、孤独を讃える物語や音楽がとびきり好き。わたし自身が物心ついたときから孤独だったし、物語と音楽にそれを肯定されて大人になった。Aqua Timezもハンブレッダーズもそう。アクアのPascalの〝誰にも打ち明けない 尊いその寂しさの 真ん中を目がけて歌う〟という歌詞は誰にも打ち明けない寂しさを抱えた人にしか書けないし、ハンブレッダーズのボーカル・ムツムロアキラの「きみはひとりやけど、それが何なん?」という言葉を忘れない。
孤独は冷たいだけではないし、寂しさとは可哀想なものではないということ。
葉子に関しては、孤独というよりも孤高であったから、また違う気もするのだが、〝ひとり〟を恐れない勇敢さが描かれたこと、そんな葉子を松たか子がすっきりと演じてくれたことが、わたしはとてもうれしかった。
野木さんの脚本を、心から信頼している。
全然まとまらなくてきりがないので、一旦このままレビューとして放出しますが、もしかしたらいろいろと編集するかもしれません。