高校生の早川秀一郎は、ある過去の出来事のために、大好きだった音楽を自ら捨て、心を閉ざしてしまっていた。ときには、その空白を埋めるために、誰かれ構わず身体を重ねることも。それでも心は満たされず、息が詰まるような苦しさに襲われたある日、早川は校舎の屋上へと向かう。空と海が美しく融けあう誰もいないその場所では、捨てたはずの音楽を自然に口ずさむことができた。 そんな屋上で出会ったのは、同級生の紺野遼平。無愛想だけれど、大好きなカメラにまっすぐ向き合う紺野に、早川は強烈に惹かれてゆく。けれど同時に、好きな事や夢に対してまったくブレない紺野と自分を比べ、どうしようもない嫉妬と劣等感を募らせていった。複雑な感情に押しつぶされそうになった早川は、ままならない想いをぶつけてしまう。その日以来、二人の関係は友情から別のものへと変化して──── そして、物語は大学生編へ。紺野は希望通りに美大でカメラを学んでいるが、早川とは疎遠になってしまっていた。 しかし、ある出来事がきっかけとなり、彼らの運命がふたたび交わろうとしていて……
(C)苑生/大洋図書/「被写界深度」製作委員会