ジョンマルコビッチ総統

坂の上の雲 第2部のジョンマルコビッチ総統のレビュー・感想・評価

坂の上の雲 第2部(2010年製作のドラマ)
4.6
2010年に放映された第二部。
日清戦争から日露戦争へ向けて、国際的な緊張の高まりを描く第二部。

若々しく雄々しい日本の軍隊の群像劇、華麗なるロシア•ロマノフ王朝、蹂躙される広大な大陸、きな臭い東アジア情勢とともに描かれるのは、東京の小さな病牀六尺、移ろう庭の季節を見つめる子規の小さな、しかし深い宇宙である。
マクロとミクロ、新たな時代への清々しい希望と古い時代の変わらない大切なもの、真之と子規との対比と調和が、この物語を広く、さらに深くしているといえる。
どちらのパートも明治を描くのに必要不可欠であると思う。

初めてみた時から記憶にこびりついていた、「のどかな春でございます」の回想シーン。色彩や演出も含め改めてみても日本的な美しさに満ちている。花一輪、枝一本を通して、春を見、人生を見る。日本文学の奥ゆかしさや気品を如実に表したよいシーンである。

さて正岡子規を演じるにあたって体重を相当減らしたという香川照之の演技に触れねばならない。
中でも「子規、逝く」における鬼気迫る演技の凄まじさ、人の命の最後の、絞り切るような気迫をあそこまで表現できるものだろうか。本木雅之や菅野美穂をはじめとする子規を支える役者たちの名演の磐石さあればこそ、その上でまるで大波のように観るものの感情をも巻き込む演技の力。正に当代一の名優だと思う。

この巻は特に演出や脚本も素晴らしく、
静と動、子規の臨終のその空気感の生々しさに観ているこちらも苦しくなるほどだった。本当にすごかった。

ところでドラマで描かれる淳さんと律さんのあの微妙な、お互いを憎からず想っているのにうまく機が合わないまま時が進んでしまった末の関係が切ない。アリアズナと広瀬の恋(夏の湖の夕暮れの美しさ!)といい、恋模様はなかなかロマンチックで少女漫画的。それが正に熱い男たちのドラマである本作に深みを与えているのも良い。

次回からは正に日露戦争を正面から描く戦争ドラマになる本作、引き続きしっかりと観たい。