こたつむり

TRICK3のこたつむりのレビュー・感想・評価

TRICK3(2003年製作のドラマ)
3.5
★ 薄い青の情景 こぼれ落ちた現実
  分断された意識 隣にはあなたがいない

人気シリーズ『TRICK』シーズン3。
これまでは23時台の放送でしたが、本シーズンは21時台。要は“メジャー”なタイトルとして認められた、ということですね。肩に力が入った仕上がりになるのも当然でした。

でもですね。
こう言ったら石を投げられるかもしれませんが『TRICK』に華やかな舞台は似合わないと思うのです(映画は祭りだから別)。「2軍で成果を出したら1軍で投げろ」と言われるのは当たり前ですが、人に向き不向きがあるように、ドラマにも向き不向きがあるのです。

喩えるならば『TRICK』は月見草。
山田と上田の微妙な関係のように、繊細な部分を愛でるのが楽しいわけで。一見してバカバカしいギャグが目立ちますが、その奥に転がる“触れると壊れそうな感覚”を大切にしたいのです。

その辺りは人間関係にも表れていますね。
本作では矢部警部補の部下が変わりますが、力関係も微妙に変わっているんですよね。初代相棒と違う雰囲気を出したかったのは分かりますが、このシリーズはマンネリを怖れてはいけないのです(と言えるのは完結編を観ているからですけど)。

ただ、着想としては面白いエピソードばかり。
《ガッツ石まっ虫》は悪ノリし過ぎと思いましたが、その他は手堅くまとまっていました。思うに、蒔田光治さんの脚本が多いほど面白くなるのでしょう。比率を調べてみると、シーズン1は7/10(70%)、シーズン2は6/11(54%)、今回は8/10(80%)。やっぱりね。

確かに解決方法は強引なんですけどね。
雰囲気作りは前のシーズンよりも良かったと思います。個人的には『死を招く駄洒落歌』と『瞬間移動の女​』は好みでした。

まあ、そんなわけで。
弱小チームのエースが強豪チームに移籍してオロオロしているようなシリーズ。実力は折り紙付きなので安定感はありますが…若き頃の衝動を期待すると肩が下がりますので、結果に拘らずに見守るのが吉です。
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