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ブラック・ミラー シーズン4のSATDANのレビュー・感想・評価

ブラック・ミラー シーズン4(2017年製作のドラマ)
4.8
ここまで4シーズン観てきた中で現状一番満足度が高かったシーズン。幅広いジャンルと様々な表現手法の作品が揃っており、尖りすぎず偏りすぎてもいないバランスが取れたシーズン。さらに『Hang The DJ』という大大大大大傑作が収録されているという事実がシーズンの価値を数段階引き上げている。

子供の頃にふと感じた「ゲームの中の人は何を考えているんだろう?」という疑問をそのまま題材にした『宇宙船カリスター号』や、ジョディ・フォスターが監督を務めた『アークエンジェル』など、比較的万人向けな作品で始まり、その後の4話で一気にベストシーズンへと駆け上がっていく。

『クロコダイル』は北欧の美しくも静寂に満ちた世界で繰り広げられる悲しき物語。タイトルの意味をどう解釈すれば良いのか未だに謎だが、映像としての美しさが際立っており、芸術性が非常に高い。S1のあの曲が聴けるのも良い。その点で言うと『メタルヘッド』も個性的。全編モノクロで台詞を最低限にし、無機質なロボットとの緊迫感に満ちた逃避劇を効果的に演出していて、こちらも美しい。

これら2作だけでも十分だが、本作の評価を不動のものとしたのは間違いなく『Hang The DJ』だ。もはや説明不要の大大大大大傑作。どれか1エピソードだけ選べと言われればこれを選ぶ。

「AIが交際相手を決定する近未来、AIの導きで出会った2人は言われるがままのシステムに疑問を抱く…」という、これだけだと最近の「世にも奇妙な物語」あたりでやりそうな、ありがちで薄っぺらいSFに思える。実際途中までまるで面白くない。「まぁブラック・ミラーにも外れはあるか…」そう思っていた。

しかしその予想はラスト10分で完全に裏切られる。前代未聞の驚愕の展開。そして待ち受ける結末は、単に度肝を抜くストーリーなだけでなくSFとして凄まじい完成度を誇り、観終わって思わず『大傑作だ…』と呟いてしまった。もちろん映像としてのクオリティも高く、ガジェットからインテリアデザインに至るまで洗練された美しさを保っている。

「交際相手がAIによって指定され、指定された期間交際するプロセスを繰り返すことで99.8%の確率で運命の相手を導きだすシステム」がもし実在するなら、それはどのような仕組みでどのように計算されるのか。本作のラストはそこに斬新かつ現実味のある解答を出す。この結末の解釈だけで何時間でも語れそうな奥深さがそこにはある。1時間の中編だからこそできる傑作。全シーズンでも最高クラスの仕上がりだった。今すぐこれを観てもらいたい。

最後のエピソード『ブラック・ミュージアム』は「痛覚依存症」という小説を原作に脚色を加え、シーズン3の『サン・ジュニペロ』と世界観を共有した作品。かなり刺激的なテーマでタイトル通りブラックなネタが満載だが、それと同時にクライマックスで描かれるテーマは“黒”人差別であり、白人による非人道的な行為とそれを肯定する社会の様子は計らずも今日のBLM運動に繋がる。
ただ、全体の流れは大体予測できてしまうし、そもそもこれを『サン・ジュニペロ』と繋げてほしくなかった…あの作品は美しいままにしておいてもらいたかったんだよ…

というわけで最後は納得いかない部分もあったが、ハズレエピソードは無いと言って良く、おまけに『Hang The DJ』という最強クラス作品も入ってる。観始めるならこのシーズンからがベストだろう。
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