W50

ミスター・サンシャインのW50のレビュー・感想・評価

ミスター・サンシャイン(2018年製作のドラマ)
5.0
陽光、静謐、余白。

日本では避けられがちな、侵略者としての日本が描かれているから見るべきだと思いました。作中では多くのシーンが陽光を取り入れて、美しく人物や風景が映し出されます。そしてそれらが日の丸によって蹂躙されていく様は息が詰まります。

なぜこの作品が日本で知られていないか容易に想像ができますが、製作者の頭の片隅には日本人視聴者の姿があったはず。

物語の大半の部分は日露戦争前夜の朝鮮が舞台で、世界史の資料集の年表では1897年の「大韓帝国へと改称」の次は1904年の「日韓議定書」となっています。いわば日本側では捨象された歴史です。エシン達については、1905年の第二次日韓協約の次にただ1行「反日義兵闘争の拡大」とのみ記されています。

ク・ドンメとキム・ヒソンという日本にゆかりをもつ2人に日本人の側面が仮託されていると思いました。

エシンを時に傷つけながらも執着するク・ドンメは、日本の残忍性(朝鮮出兵、植民地支配)と朝鮮に向けられる羨望(陶磁器への熱狂、朝鮮通信使との文化交流)という矛盾。

「美しいだけのものが好き」とほざき、親の罪も知らずにユジンに馴れ馴れしいヒソンは日本軍の蛮行を知らず、韓国のポップカルチャーに陶酔する日本人。

「親の罪は子の罪ではない」という言葉は簡単には言えないし、簡単に受け取ることもできない言葉です。

正直に言うと、ぬくぬくと育った私たちには想像し得ない感情や言葉が多いです。静寂や余白の多いドラマだと最初は思っていましたが、それらを噛みしめるために不要なシーンは決してないです。

ラストでユジンの墓の前に集まった青年たちは、三一独立運動へと向かうのでしょう。半世紀以上続いた日本の地獄の半ばで物語は終わります。

『過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる』(ヴァイツゼッカー)

この作品を見たら他の作品が茶番のように思えてしまう。

Sunshine, Silence, Space.
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