ジャクト

ベター・コール・ソウル シーズン6のジャクトのレビュー・感想・評価

4.9
『ブレイキング・バッド』に登場した悪徳弁護士のソウル・グッドマンが、平凡な貧乏弁護士、ジミー・マッギルだった頃の物語。過去から現在へ。ジミー・マッギルから、ソウル・グッドマン、そしてまたジミー・マッギルへと戻る、波瀾万丈な人生を描いたドラマ。

脚本、映像表現、演技、すべてが素晴らしい。ジミーはいわゆる一般的な弁護士のイメージにはそぐわない男であり、平気で嘘をつき、法律スレスレの行為を好み、達者な弁舌を武器に、最後は裏社会へと身を投じていく。およそ主人公とは思えない性質の人間である。

にも関わらず、彼が魅力的なのは、明るくジョークが大好きで、根は優しく悪になりきれないという憎めなさがあるためで、ドラマを見続けるうちに、主人公としてこれ以上ない人物に思えてくる。ジミーの物語を次から次へと追いかけたくなる。またジミーだけでなく、恋人のキムや兄のチャックなど、周囲の人々が魅力に溢れているのも、このドラマの特色であると感じた。

演出も巧みである。ジミーの現在は、すべてモノクロで表現されている。普通であれば、過去であるソウル・グッドマンのパートをモノクロで表現するように思うが、ジミーにとっては過去こそが色付いた栄光の時代であり、すべてを失った現在は、色を失った不遇の時代である。その表現の仕方がまた、このドラマを優れた作品にしているように感じられた。

兄との確執。兄へのコンプレックス。優秀な兄と「滑りのジミー」の愛憎渦巻いた物語。

後半に頻出する「タイムマシン」のワードが心に刺さる。過去には戻れない。しかし、現在の行動によって、過去は変えることができる。タイムマシンを使わずとも。

名作『ブレイキング・バッド』に負けず劣らずのスピンオフ。傑作でした。
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