ジャクト

THE CURSE/ザ・カースのジャクトのレビュー・感想・評価

THE CURSE/ザ・カース(2023年製作のドラマ)
4.6
不動産業者の新婚夫婦、ホイットニーとアッシャーは貧困層の多い地域にホイットニー自身がデザインしたエコロジー住宅を建て、地域活性化を目指すプロジェクトを実行する。同時にアッシャーの友人であるテレビプロデューサーのダギーと手を組み、夫婦の取り組みをアピールするためのリアリティーショーの製作を行う。しかし、崇高な計画を推進していたはずの夫婦の行動は思うようにはいかなくて……といったストーリー。

ジャンルの分類が難しい。コメディであり、人間ドラマであり、ある意味でホラーでもあり……。ただ、脚本、演出、演技、作品内の居心地の悪い空気感。すべてが独特で素晴らしいものになっている。

ホイットニーとアッシャーはいわゆる「意識高い系」夫婦で、特にホイットニーは意識の高さを全面に押し出して生きている。

そうして地球に優しいエコな住宅の建築、地元に住んでいる先住民の文化の尊重、地元のアーティストの活動への支援など、パッと見は善行とも思える行為に進んで取り組んでいるものの、実態は穴だらけであり、エコな住宅は冷房が使えないなど快適に過ごせる住居ではなく、地元のアーティストの薄っぺらい表現を理解している風で称賛し、活動に必要な資金の一部は悪徳不動産業者と評判なために自身も嫌っている両親にホイットニーは借りている。まさに「意識高い系笑」と揶揄されるような生き方を夫婦は行っており、特にホイットニーは自身のデザインした住宅を「アート」と呼ぶなど、そうした自分に酔っているようにさえ見受けられる。

夫であるアッシャーには笑いのセンスがなく、場の空気を凍らせることもしばしばで、また優柔不断なために物語が進むにつれホイットニーには愛想を尽かされはじめる。駄目な夫と、前向きでエネルギーに満ちた妻。そのために序盤から中盤は視聴者としてもアッシャーの方が悪いのだ、と思わせられる構図になっているのだが、前述の思想や行為もあって、物語の進行と共に実はホイットニーの方が異常なのではないか?と感じさせる演出がなされている。そのような展開、人物の造形といった点でも、この作品は独自の魅力に溢れているように感じる。

衝撃のラストは賛否両論分かれるだろうと思うが、個人的には目の離せない1話だった。地に足のついていないことへのメタファーのようにも捉えられるし、現実的でない現象が起きたことで、作品内リアリティーショーの登場人物だった夫婦の現実味がさらに薄れ、あくまでこれは虚構の物語だよ、というメタ的な演出であったようにも思われる。同時に、別に深い意味がなくても不思議ではない、そんなラストだった。

全編を通じて、とても良いドラマでした。
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