Oto

ウエストワールド<ファースト・シーズン>のOtoのレビュー・感想・評価

4.5
総評
ep5, 7, 9,10が度胆を抜く面白さなので、前半意味不明でも頑張ってみてほしい。こういう映画が広まるとまた「AIは人間の敵」と考える人が増えてしまいそうだけど、これだけ作り込まれたAIのSFは映画だとなかなかみれないので、娯楽・哲学・アートとして非常におすすめ。
時間の制限がないのもあろうけど、これだけ全員にちゃんと役割が与えられている群像劇って他に見たことがない。HBOの作品を色々みてみたくなった。
世間一般で「ノーランの作品が好き」って言うと、圧倒的に兄クリストファーばかり注目されているけど、弟ジョナサンの貢献が非常に大きいことを感じた。"ノーランっぽい"複雑な脚本、映像や細部への拘りはこのドラマから強く感じられて、『ダンケルク』がダメだったというノーランファンというのはむしろ弟が好きなのでは?多分自分もそっち寄り。

ep1
設定勝ち。ノーラン弟の脚本も流石。創造者vs.被創造者ってSFではありがちだけど、創造者の中でもscientist, engineer, manager, writerとかいろんな立場のキャラが対立していてメタ的でリアルだし、被創造者(host)の仮想世界での物語にもドラマ性があって引き込まれる(名作映画の良いとこ取りみたいな展開)。
hostたちの演技凄いし、引きのある画が常に続くし、お金かけてるだけあるなー。Angela Sarafyan綺麗だなー。
英字幕有り難いけど、モザイクは趣がないのでやめて欲しい…

ep2
何でもできる世界west worldで何をする?っていうので考えさせるのは面白い、自分もWilliamみたいに自分の中の理性に支配されて何もできないのかも。実は現実世界とそう変わらないのかも。
hostたちに自覚が芽生えてきてレプリカントっぽくなってきた。guestが無敵すぎてアクションが面白くないけど。
mazeが何なのかも気になるし、Fordもやっと台頭し始めて面白くなりそう。「細部に恋をする」はタランティーノの教えだ。

ep3
「間違いが進化を作る」、予想外が増えて面白くなってきた。ウィリアムの役割は「視聴者にWestworldを疑似体験させる」だと思っていたけど最後でシナリオの混乱に巻き込まれていく。
テレサとバーナードの不倫設定がまだ効いてないけど、新しく明かされた「アーノルド」とバーナードが重なっていく。"意識"はアバナシー&ウォルターからドロレス&メイヴへと伝染したように見えていたけど"神の声"が原因だとわかって、傲慢なフォードはホストの能力を軽視しているので大ごとになるんだろうなというのが読める。一方のバーナードは理性より好奇心が勝って野放しにするけど、機械と人の境界に興味がある人間からすると、研究のタネになりそうな要素がたくさんあってここら辺すごく楽しい。
想定内だけど、GuestとHostの境界が曖昧になっていくのも楽しめる。辛い現実があって架空に逃げ込むバーナードは、殺され続ける記憶が蓄積してしまったHostたちと、ほぼ変わらない。
オリオン座とか謎を次々に追加して引っ張る作りはドラマ的だな〜。原作の映画の方を見てみたくなっている。

ep4
落ち着いてきた、ホストの自我が強まってくだけでやや退屈だったけど、今後進みそう〜
とか、ゲストが「死ねない」のがリアルでないからその先があるとか、は面白い展開。ドロシー・メイヴと黒服が協力するんかな。 ウィリアムとローガンの会社の調査、テレサは金庫番の会社、黒服の男は「財団」で、外の世界でも繋がってきそう
バーナードの行動が意味不明なので、ただのアホではなくてちゃんと回収される事を祈ってます、フォードの指示通りってことか?ワインのシーンはフォードのヤバさが伝わって良い

ep5
めちゃ面白くなってきた〜
黒服とフォードの対峙、メイヴやドロレスの自我もビッグイベントだけど、ウィリアムの「No more pretending.」はめちゃ大きい、絶妙なタイミングでドロレスに話しかけるのが不気味に見えるけど、感性が理性を上回ってきた。フォードはなぜ黒服を止めない?慢心?好奇心?
エルラゾとローレンス同じ顔〜と思ってたら案の定。輸血のシーンアガる〜星座の意味(データの持ち出し)も楽しみ。
二流作家が性と犯罪を描くというけど、このドラマはむしろ自己実現か他者の目か、好奇心か安全か、というような本質を突いてくるからすごい。自分は完全にウィリアムタイプの人間なので重ねてしまう。

ep6
テディの悪の覚醒、メイヴの統覚、テレサの盗用、デロス社の視察、技術部の汚職、襲われるエルシー、アーノルドが残した家族、「第1世代」。
映像で自分をみるメイヴのシーンカッコいい。そもそもメイヴは引退させる流れあったのに現役ってことはいじってる人がいるってことだな。
収束と思いきやまた広がったなー..エルシーが見つけた新事実は?アーノルドはどこに?

ep7
テレサたちが利用したいホストはてっきりメイヴと思ったらまさかのクレメンタイン。レベリーが自我の覚醒の要因でもなく、内的・外的な要因がありそう。メイヴが脱出したらエクスマキナ状態だ。。
ウィリアムはこの作品における哲学性を担っていて、虚構を通して自分の実感が明らかになっていく。ドロレスも都合のいい"鍵"ではなくなっていく。
終盤の大きなどんでん返し、このタイプはどこかであるだろうと思っていたけど、それでも予想外で驚いてしまった、もう一度初めから見たいね。"I built all of this."と言うくらいなので、職員は皆ホストという可能性ありそう。アンソニーホプキンス最高ですね〜
※ローガンたちの会社がデロス社と繋がってる?

ep8
"Show, don't tell. Isn't that what you writers prefer?"
メイヴ完全に覚醒のち混乱。テディ覚醒。シャーロット始動。ドロレスの回顧。ウィリアム堕落。エルシー殺害。アシュリー懐疑。ローガン復活。黒服の自白。
言語で相手を操れる機能、最高だね。そろそろ外の世界の話になりそうな予感がする。
あの状態のメイヴと黒服の男が出会うのおもしろそ〜「痛みは必要」と言う話だったな、フォードは雑魚キャラに見えてきた

ep9
メイヴがバーナードを超え、バーナードがフォードを超え、ウィリアムがローガンを超え、テディやヘクターが意識を持ち...。メイヴが燃やしたのは爆破装置の除去のためか。
バーナードの記憶が伏線回収担っているという作りが上手。そして最初の記憶からつながるアーノルドとバーナード。そこに交わる、殺したドロレスと黒服(デロスの重役=シャーロットの上司)。テディvsウィリアムvs黒服かな

ep10
すげえ!!時系列!!!
創作をしたり他人と交流することが自分を知ることだというのはよく言われるけど、愛か殺しかお金かなんていう極端に自由な選択が許されるWest Worldだからこそ、本当の自分を見つけるのにむしろ苦労したウィリアムが黒服になったということか、、。そしてテディの元に戻るドロレス...よくできてる。。テディがワイアットだと思ったらドロレスだった。
作品は作った人ではなく、享受する人のものだというのは考えさせられたけど、結果的にはどちらでもなく作品自身のもの。。フォードとウィリアムは結局同じ立場にいたってことか?となるとホストたちを脱走へと仕向けていたのはウィリアムか(死のないルールへ反対してたし)、いやでもそれならワイアットを信じてるのおかしいな..とか思っていたら...
やっぱり神はフォードでした。そしてホストは神を殺す。きっとここまで想定内。もしかしたら第三者がいる可能性もありそうだしホストの自由意志の可能性も無きにしも非ず。
迷路の中心は自分、つまり能力は神が与えるものではなく、自分の精神が与えるもの、というのはミケランジェロが象徴していたけど、これはホストだけじゃなく現実の人間についても言えることなんだろうと思う。答えは外じゃなく内にある、暇つぶしとかインサイトとか全部これ。
1話の冒頭はバーナードじゃなくてアーノルドで、ドロレスだけが診断で服を着てたのもこれか、伏線の緻密さが半端ない。
2は日本も舞台と知って楽しみだけど、先に原作を見ようと思う。
Oto

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