ぺむぺる

獄門島のぺむぺるのレビュー・感想・評価

獄門島(2016年製作のドラマ)
4.0
邦画ミステリという〈地方〉における、市川崑あるいはテレビ版古谷金田一の〈因習〉を、しなやかな知性と明晰な視点で打破した快作。

徹底的に無駄を排したプロットと「戦争のPTSDを背負う金田一像」を描いたユニークな脚本の優秀さもさることながら、狂気の淵に佇む金田一をはじめ「人」の撮り方が抜群にうまく、ともすると記号化してしまいかねない「本格ミステリのリスク」を軽やかに回避している。それは「人間ドラマ」を描いてきたはずの推理モノにとっては意外な盲点だったに違いなく、原作の情報整理にばかり拘泥してきた凡百の作品はもとより、演出の妙や画力で構成される市川作品(およびそのフォロワー)にはない清新な空気を感じさせてくれた。

こうした作品が「テレビドラマ」として制作されたことに対し、日本映画界はもっと震撼しなければならないし、わたしたち映画ファンは邦画の未来のためにも本作をもっともっと絶賛しなければならないと思う。
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