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You May Dreamのtakのレビュー・感想・評価

You May Dream(2018年製作のドラマ)
3.2
鮎川誠と悦子(シーナ)の出会いから、シーナ&ロケット結成、ブレイクまでを描いたNHK福岡製作の地域ドラマ。シーナが亡くなった2018年に放送されたものを、鮎川誠の死去に伴い2023年2月に再放送。

地域ドラマは、全国放送では取り上げないテーマを扱う作品が多いが、単発だし物足りないものが多いのも現実。しかし、本作は挿入されるロックの名曲や当時の福岡の音楽シーンについての解説も巧みに盛り込まれていて、単に人情や家族愛のドラマにとどめていない。そして地元愛をたっぷり詰め込むのは、地域ドラマのお約束。これも方言コテコテ、ローカル地名も生々しく入ってくるから、全国放送じゃ伝わらないのでは?と心配になるw。

石橋静河がヒロイン悦子を好演。負けん気の強いキャラクターが最初のシーンから伝わってくる。グループサウンズのライブに行くのを大人に阻止され、夢中になれる音楽を大人は理解してくれない。ドアの向こうから聞こえてきたヤードバーズに惹かれて、誠と出会う場面。二人で音楽の話で盛り上がっていく様子が素敵だ。「電車男」で山田孝之が「マトリックス」を語り倒す場面みたいに、誠がブルースロックを話題に口が達者になる様子に、こっちまで表情がゆるむ。
「あんたはキース・リチャーズよりカッコいい♡」
そんなこと女の子に言われたら舞い上がっちゃうよ!😂。「好き」のベクトルが一致するのは男女の出会いでは大切なこと。そして音楽でつながれた絆はとてもとても強い。

悦子の妊娠、結婚を経て、生活という現実に悩む誠の生真面目な姿。悦子の厳格な父を演ずる松重豊の「東京で勝負してみんね」のひと言が事態を動かす。

今も続く若松の高塔山ロックフェスのきっかけは悦子のこんなひと言だったのか。アルバム「真空パック」のジャケット撮影シーンも再現してみせて、ラストはYou May Dreamを歌うライブシーン。二人の活躍の陰に、福岡の温かさがあったことが伝わる良作。父と娘が見つめる若戸大橋の場面は胸にくるね。

鮎川誠氏のご冥福を改めてお祈りいたします。
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