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八つ墓村のtakのレビュー・感想・評価

八つ墓村(2019年製作のドラマ)
3.5
吉岡秀隆の金田一耕助、「悪魔が来たりて笛を吹く」に続く第2作目。かつて8人の落武者を村の者が惨殺した事件があり、彼らを祀ったことから八つ墓村と呼ばれる村落。東屋と呼ばれる村の名家の相続人として名前が挙がった青年が事件に巻き込まれるところから物語は始まる。

野村芳太郎監督の松竹版(渥美清の金田一耕助)を地上波の放送で初めて観たのは高校時代。武士の生首が転がる惨殺シーンと「祟りじゃあー!」は強烈な印象として残っている。初公開時は小学生だったから、とにかく怖い映画だというイメージばかりがあった。

今回のNHKドラマ版。登場人物それぞれの本音がなかなか見えない中、不穏な言動に目が離せない。村上虹郎に迫る真木よう子の迫力。唐突にキスされて、背中の傷をあんなふうに舐められたら、そりゃメロメロになる。それを見つめる腹違いの姉蓮佛美沙子が静かに強い思いをたぎらせる。さらに佐藤玲演ずる西屋の女性も絡む。ミステリーの結末と合わせて男と女の物語も並走するのは、金田一耕助シリーズの中でも珍しい展開。

しかし一方で激しい殺人や暴力場面が多いのも「八つ墓村」。冒頭の落武者殺害から始まって、村人を襲う大殺戮シーン、鍾乳洞の奥に隠された遺体、座敷牢で手篭めにされるシーンなど。後味の悪い「悪魔が来たりて笛を吹く」でも思ったが、吉岡秀隆の金田一耕助作品はかなり攻めた描写が多い。NHKドラマでこんなに血しぶきが出てくるのには驚かされる。

これ以上被害者を出したくないのに救えなかった、と嘆くのが吉岡秀隆の金田一耕助。本作は村上虹郎自身が真相に近づく展開もあるので、金田一耕助の活躍はやや後付けにも見える。でも「探し物は見つかりましたか」と笑ってるとも真顔とも思えない微妙な表情で現れる場面なんて、いかにも探偵ものらしい感じで好き。

久しぶりに「八つ墓村」のストーリーに触れたが、相関関係がちょっと難しい印象。エンドロールの最中に突然ラブコメ?な演出と、それに続く物言わぬラストシーンには驚いた。
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