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全裸監督のKYのレビュー・感想・評価

全裸監督(2018年製作のドラマ)
3.5
‪Netflixドラマ。‬

‪村西とおるが一人のビジネスマンとして新たなポルノ時代を作り上げていくストーリーをNetflixそのものにかけてる印象が面白かった。ビデオの時代を切り開く村西と、Netflixの存在がだぶるし。‬

あと山田孝之と森田望智のカメラを向けた時の豹変の落差やエロシーンが沢山見れて良かった。‬

‪でも刺激的なネタでブリーフ一丁の山田孝之をSNS広告でバンバン流したのが功を制しているけど、かなり下駄を履かされてる作品だという印象も受けてしまった。‬

‪日本のクリエイターが賞賛する気持ちは分かる。予算のあるドラマや映画を作るには漫画原作やコンプラに従わなければならない現状。映像関係者にとって『クリエイターが思う存分力を発揮できる場』としてのNetflixが本腰をあげて広告出しまくってる作品となれば、賞賛しなければ未来は開かれない。‬

‪加えて『テレビは見ないけどNetflixは入会してる』とマウントを取りながらもさして海外カルチャーの素養がなく何を観たら良いか分からない人』も、影響力のあるクリエイターのSNSでの賞賛から、とっつきやすく飛びつけるコンテンツだ。『スポンサーの規制がないとここまでできる!』と言えるし。でも冷静に見ると、普通のドラマな気が。。‬

‪確かに今作みたいなAV監督みたいなニッチなネタを時代モノのセットだったりVFX・CGを存分に使って作り上げる日本のドラマは見た事がない。でも全方向でその目配せがなされてはいない印象だった。‬

‪ハリウッドみたいにチームで作ったという脚本は期待を上回らない。コンプライアンスを考慮に入れ『女性の性の解放』を掲げている点だったり、日本の内輪的社会背景を入れ込んだ台詞が少なかったり、テレ東深夜ドラマ的なゆる寒い笑い要素を排除してくれているのは海外向けコンテンツとして好感を持ったけど、性の解放はエクスキューズとして偽善的に配置しているのは言うまでもなく、他の海外ドラマと比べてクリフハンガー要素が弱い。‬

‪何度も成功と挫折を繰り返す主人公像だけど、基本的に失敗してもお金が入ってきて幾らでも資金を使って再挑戦できる設定なのでイマイチ挫折が挫折にならない。『どうすんのこれ?』とハラハラしない。そこまで応援する気にならない。挫折は警察に捕まるかライバルに邪魔される2パターンの繰り返し。‬

‪危機を乗り越える方法も斬新さがない。懲役300年以上になった時も、どう面白い解決策で乗り越えるのかと期待したら都合良く黒木香のビデオが販売OKできて解決。‬

‪人物造形も掘り下げない。SEXで嫁をイカせられない設定の主人公の割にはその後、克服もないままSEX上手い人みたいになってる所もそうだ。村西とおるの表面的なエピソードの羅列になってる。ただプロットをなぞっている。‬

‪撮影に関しても予算はあると言いながらも他の海外ドラマに比べたら少ないので時代モノの背景の制約で撮れる角度が限定されてるからか凡庸だし、ハリウッドでカラーグレーディングしたという割にはルックも普通。何より音楽がきつすぎる。‬

‪エンディングのKanye WestのBlack Skinheadのパクリ曲は海外をターゲットにするには恥ずかしいし、時代も合っておらず時代錯誤で劇中での効果も低いPrimal ScreamのRocksとか、あまりにも歌詞が歌手本人のパーソナルな側面を露骨に持ちすぎているAmy WinehouseのBack to Backを使ったり、的外れすぎる。‬

‪もちろん今作が話題になる事で、Netflixで日本のドラマが沢山作られる事は嬉しいんだけど、今作の絶賛で日本のNetflixコンテンツの方向性も自由を履き違えて欲しくないとは思った。
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