YM

マンダロリアン シーズン2のYMのネタバレレビュー・内容・結末

マンダロリアン シーズン2(2020年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

本当に『スター・ウォーズ』を愛する全員に観てほしいドラマ。BD買うよ!出して!

なんといってもキャラ使いの巧さ。今回アソーカやボー=カターンの実写化等々話題もあったけれど、まずはボバ・フェットの復活には驚いた。演じるのはティムエラ・モリソン。『クローンの攻撃』でジャンゴ・フェットを、そのあとにはクローン・トルーパーを演じたモリソンは、満を持して"ジャンゴの息子=完全クローン"であるボバを演じることとなった(なお、モリソンは嬉しすぎて打ち合わせの2時間前にスタジオ入りしたとか……)。S2の最初のほうで、勝手にアーマーを着ている保安官を出しておいたうえで、6話でようやく本物が出てくるのもニクい。
ボバのブラスターの抜き方、撃ち方、収め方、どれをとっても『クローンの攻撃』でのジャンゴ・フェットそのまま。バイオレンスなまでに白兵戦も強い。ただ違うのは、腹が出ていることくらいか。ボバの愛船・スレーヴ1も「サイズミック・チャージ」を久々に放つ!

いやしかし、最終話には泣かされた。あの『ローグ・ワン』の最終シークエンスの対称形を、見事にやってくれた。ルーク・スカイウォーカーの再出演。X-wingとグルーグーの反応だけでは、「ジェダイが来たな、誰だろう。アソーカの助太刀か?」と思ったくらいだ。しかし、監視カメラに映る姿は一刀流。ここでアレ?と思う。アソーカは大小二刀流だし……と思っていると、「緑」のライトセーバーであることが示される!ここからは怒涛だ。緑のライトセーバーがダーク・トルーパーを斬っていく。
柄が見え、左手は手袋であることも映される。まだフードの下は見えず、誰だかは示されていない。だけど、ここまで説明されれば、勘の悪い私もさすがに分かる。冗談抜きに、ここで叫んだよ私は、マジで。
マントを膨らませながら、エレベーターに乗り込む姿。上昇を示す音だけが聞こえる。ダーク・トルーパーが向き直り、一瞬の間。ドアが開いたあとは、あの『ローグ・ワン』の伝説となったダース・ベイダーの"無双シーン"の息子バージョンの再来だ。煙のなかの緑の光刃。艦橋に現れたジェダイはついにフードを取る。ここであのテーマがようやく流れる。マニアが「ルークのフォームはベイダーと同じ"シエンの型"だ」と言っていて、腑に落ちた。
これ以上ない、完璧な登場シーンだろう!

思えば『ローグ・ワン』のダース・ベイダーのシーンは、「シス卿vs反乱軍無名兵士」であった。圧倒的な力の差がそこにはあった。今回はどうか。「ルーク・スカイウォーカーvsダーク・トルーパー」もまた、圧倒的な力量差があった。その前段では、本作の主人公であるマンダロリアンが懸命に技を繰り出して戦った相手であるにも関わらず、ルーク・スカイウォーカー=ジェダイには及ばない。そう、普段はストーム・トルーパーや街のならず者相手に戦っているから忘れがちだが、本当は強大な砂漠の怪物やなんやらと、スーツや自分の経験を活かし、仲間と力を合わせてようやく勝てるのが『マンダロリアン』の主人公だった。その「弱さ」こそ、S1から続く、グルーグーへの無条件の愛とともに重要なマンドーの魅力なのだが、逆照射の形で、ここでは示されている。

別れの際、ヘルメットを脱ぐ。教義に従って生きるディンが、ヘルメットを人前で脱ぐのは帝国の基地での一件以来2回め。これがどれだけディン・ジャリン=マンダロリアンにとって重要なことかは、これまでずっと描かれてきた(S1で決め台詞だった「我らの道」に代表される、マンダロリアンの教義は、実はマンダロアでも極右的保守の道であることが、S2にてボー=カターンによって匂わされている。結構重要な気がする……S3で明らかになるのかな……)。それにもかかわらず、ディンは二度、脱ぐことを選ぶ。それぞれに、ディンの静かな決意が現れる良いシーンだ。
そしてこれだけ正史(=映画)を接続しておきながら、最後の最後には、これまで『マンダロリアン』が描き続けてきた「混迷の時代を懸命に肩を寄せ合って生きる者たちの物語」に収斂させる。だからこそ、この別れのシーンで素顔を触れさせるディン、そしてエレベーター が閉じるまでの一連のクライマックスに、涙を禁じ得なかった。
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