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レ・ミゼラブル 終わりなき旅路のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

4.7
本作は、3幕に渡って展開される。「第1幕」の舞台は平成3年(1991年)~平成7年(1995年)の神戸。ある日、殺人犯の少年が刑務所から脱走したニュースが駆け巡る。2年前、17歳の少年・馬場純(吉沢亮)が正当防衛の末、殺めてしまった相手は、母・結子を騙して全財産を巻き上げた男・斎藤太(寺脇康文)。病気の弟の手術費を稼ぐためアルバイトに精を出していた純は、刑事罰となり、少年刑務所に入れられてしまう。ある日、弟が危篤であることを聞かされた純は思わず脱走。けれども弟はすでに亡くなってしまっていた。絶望の淵で自殺しかけたところ、自立支援施設「徳田育成園」を営む徳田浩章(奥田瑛二)に助けられ、身分を隠して育成園で暮らし始める。そこで弁護士を目指す少年・渡辺拓海(村上虹郎)と出会うが……。
 もう一人の主人公は純が殺めてしまった男・斎藤の一人息子・斎藤涼介(井浦新)。悪徳な両親と縁を切っていたものの、父親が殺された理由が投資詐欺を働いたせいだと世間に知られ、被害者遺族のはずがまるで加害者家族の様な報道被害にあってしまう。そんな中、平成7年に起きた阪神・淡路大震災。未曾有の大震災が2人の少年の運命を大きく変えることに……。
 「第2幕」は平成16年(2004年)の東京を舞台に、「第3幕」は平成30年(2018年)の福島が舞台となる。2人の主人公の再会と、阪神大震災で決定的に変わった運命のその後が描かれ、世間から身を隠しながら生きる純(ディーン・フジオカ)と、純を追いかけ続ける涼介、そしてついに対峙する2人の男、30年にわたる長い旅路に打たれる衝撃的な終止符が描かれる。
ビクトール・ユーゴーの大河小説を、日本を舞台に移しドラマ化。
キリスト教的精神が色濃いストーリーを、「犯罪被害者と加害者の対立と許し」「犯罪を犯した人間の贖罪」を軸に上手く日本版としてアレンジしている。
原作でジャン・バルジャンを改心させる司教の役どころを自立支援施設の施設長と施設での親友に振り分けたり、生体肝移植が必要な弟を救えなかった悔いと罪を背負い、施設長と親友のために人生をやり直していこうとする馬場純。犯罪被害者でありながら、父親の罪を背負い馬場純を憎む斉藤涼介。二人の対立と贖罪と許しを軸に、娘の梢を育てるために苦しむ母親などのドラマが描かれるが、梢と恋人の関係や無許可保育園であこぎな商売する母親と娘の関係は薄くなってしまったのが残念。
演技派俳優のアンサンブルによるヒューマンドラマは、見応えがあった。
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