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マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~のorangejuiceのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

ジアンの、頑なな荒んだ表情が回を追うごとに変化して行く様子が凄い。
生活の苦しさ、片想いの苦しさ、関係を失う恐怖。
闘う時は、相手を射抜くほど強く目に光が宿り、狡猾だったりその腹の座り方だったり、どんな強大な敵もジアンなら倒せそう、と思わせるほどなのに、ドンフンにふと見せる脆い表情が切ない。

ジアンがお湯を沸かす場面、それだけでジアンのこれまでの孤独や闘いや痛みやひたむきさや優しさが走馬灯みたいに思い起こされて、泣かずにはいられない。
きっとまたコーヒーを2本入れるだろうそしてスプーンで掻き回す、そう自分が自動的に想像していることに気づき、もうこのドラマの世界の一員にしてもらってる気がしてしまう。沸騰した場面。愛しい人からの軽蔑という恐怖と、相反する胸の高鳴り。

こんなふうにジアンのみならず登場人物たちの、日々の何気ない行動ややり取りにも、そこに至るまでの歴史を知っているから、物語の後半はあらゆることが心の琴線に触れて泣いてばかりいた。

長男と三男のキャラも本当に可愛い。特にギフン。ユラとのことで兄に八つ当たりしたり、車動かそうとしたり、ドンフンが怪我したら居ても立っても居られなくなったり。気が短いけど愛に溢れていて。サンフンのお葬式での行動も最高だった。

ジアンとドンフンの、お互いを守るための行動の本気さ。失うものがあろうとも全力で立ち向かってゆくシーンが、いったい何度あったろう。どっちも最強。
そのカッコよさにいちいち目が眩むし、きっとこれこそが真実の愛なんだと目の醒める思いがした。不安が募る時にも、ドンフンの佇まいを観るだけで、この人なら絶対に間違ったことはしない、という信頼感でいっぱいになる。

社会的な立場や背景は完全に違うのに。
2人はそこはかとなく似ているから。
愛のために家族を守るためにひたすら耐える。自分を殺して生きていた。そんなお互いを生き返らせるために出会った2人。
そして、幸せになることが恩返し。なんて美しい考えなんだろう。そこにはエゴがなくて。相手の幸せを自分の幸せより願う気持ち、わかる。本当に人を愛すると、自分と相手との境目が曖昧になって、個の自分が薄まる感覚がある。自分の辛さなどどうでもよくなる。
けれど相手の幸福の中に自分も一緒にいたいというのはエゴなのかな。永遠の課題。自分が一緒にいることで不幸せにしてしまう可能性もあるから。

真実の愛は、お互いを限りなく強くする。そして、本当の意味でお互いを幸福にできるのだと思わせてくれる。
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