『チープ・フライト：豪華キャストの輝きを活かせなかった薄味のドラマ』
2013年3月1日、日本テレビ系列で放送された単発ドラマ『チープ・フライト』。当時、日本国内でようやく本格的な離陸を始めた格安航空会社（LCC）を真正面から取り上げた意欲的な作品であり、主演の竹内結子をはじめ、向井理、桐谷美玲、加藤あい、そして特別出演の宮崎あおいと、単発ドラマとは思えないほどの豪華絢爛なキャストが集結したことで、放送前から大きな注目を集めていた。
かくいう私も、航空業界モノのドラマが好きだということもあり、大いに期待してテレビの前に座った一人だ。モデルがどう見ても日本航空（ALJ＝JAL）とピーチ・アビエーション（チェリーズ＝Peach）であることは明白で、その強力タッグがどのような「お仕事ドラマ」を見せてくれるのか、胸を躍らせていた。しかし、約2時間の放送が終わった時、心に残ったのは高揚感ではなく、なんとも言えない肩透かし感と、「豪華な食材を使いながら、なぜこんなにも薄味の料理になってしまったのか」という純粋な疑問だった。
物語は、大手航空会社「ALJ」で働くプライドの高い客室乗務員（CA）、木村妙子（竹内結子）が、突如として設立されたばかりの子会社であるLCC「チェリーズ」への出向を命じられるところから始まる。当時のLCC黎明期、「安かろう悪かろう」というイメージもまだ根強かった時代だ。エリート意識の塊である妙子にとって、その辞令は左遷以外の何物でもなかった。
チェリーズに出社した妙子を待っていたのは、ALJの常識が一切通用しない「効率最優先、コスト最優先」の世界。制服はポロシャツ、機内清掃はCA自らが行い、フライトの合間には地上業務でチラシ配り。機内サービスは基本的にすべて有料で、「お客様は神様」ではなく「運賃を支払ったお客様」として割り切る。極めつけは、コスト削減の象徴として描かれた「トイレットペーパーの三角折り禁止」という徹底ぶり。
序盤は、このカルチャーショックに戸惑い、反発する妙子の姿がコミカルに描かれる。竹内結子という女優の持つ、知的で上品でありながらもどこか親しみやすい（そして、時に高慢な）キャラクターが、このコメディパートを軽快に牽引していたのは確かだ。彼女が不満を露わにすればするほど、チェリーズの「非常識な常識」が際立ち、LCCという新しいビジネスモデルの特異性を分かりやすく提示する役割は果たしていた。
しかし、問題はここからだ。ドラマとして、このカルチャーショックを乗り越え、妙子がCAとして、一人の人間としてどのように成長していくのか、LCCの存在意義をどう見出していくのかが、本来の「見せ場」であるはずだった。だが、本作はその肝心な部分の描き込みが、驚くほど表面的で浅い。
妙子の葛藤は、序盤こそコミカルに描かれていたものの、中盤以降、彼女がチェリーズの理念に共感していく過程が非常に急で、説得力に欠けるのだ。例えば、コスト重視の運営に反発していた妙子が、乗客とのいくつかの心温まるエピソード（例えば、安価な運賃だからこそ、遠く離れた家族に会える、夢を追いかけられるといった話）を経て、あっさりと「LCCの価値」に目覚めてしまう。こうしたエピソードの一つひとつが、あまりにも予定調和的で、深みが感じられない。まるで、「LCCはこんなに素晴らしいんですよ」という結論（＝企業メッセージ）が最初にあって、その結論に合わせるために、取ってつけたようなエピソードを並べただけ、という印象さえ受ける。
航空業界の裏側を描く「お仕事ドラマ」としてのリアリティも期待外れだった。大手とLCCの違いは、結局のところ制服や機内サービスの簡略化といった、目に見える表層的な部分に終始してしまった。「トイレットペーパーの三角折り禁止」は分かりやすいアイコンだが、LCCが本当に直面しているであろう、ギリギリのコスト削減の裏側にある安全運航へのプレッシャー、従業員の過密な労働環境、大手との構造的な摩擦といった、業界のリアルな課題や「闇」の部分にはほとんど触れられない。だから、業界の「あるある」や内情を知る楽しみも、社会派ドラマとしての見応えも得られない。これでは、単なるLCCの「紹介VTR」だ。
そして何より残念だったのが、あれほど豪華なキャスト陣の魅力が、その脚本の浅さによって完全に殺されてしまっていたことだ。
竹内結子は、高慢なエリートCAが徐々に心を解きほぐされていくという、ポテンシャルのある役柄だったはずだ。しかし、前述の通り、その変化の過程が雑なため、彼女の演技力が活きる内面描写のシーンが極端に少ない。彼女の持つ繊細な表現力をもってすれば、もっと複雑で人間味のある妙子を描けたはずなのに、最後まで「高慢とコミカル」の記号的なキャラクターの域を出なかった。
同僚パイロット役の向井理に至っては、なぜ彼がキャスティングされたのか疑問に思うほど、その役割が希薄だった。妙子との間にほのかなロマンスを匂わせるものの、それも中途半端。物語の進行に必要不可欠な役割を担うわけでもなく、ただ「イケメンの同僚」として配置されているだけに見えた。
桐谷美玲が演じた後輩CA・榎本も同様だ。妙子とは対照的に、LCCの合理性を是とする若手代表といった立ち位置だが、彼女の背景（なぜLCCを選んだのか、仕事への哲学は何か）が深掘りされないため、妙子に反発するステレオタイプな「今時の若者」という記号に留まってしまう。加藤あいが演じたチェリーズの社長や、船越英一郎が演じた妙子の元上司（出向を命じた張本人）も、LCCにかける情熱や妙子への期待を説明的なセリフで語るばかりで、彼ら自身の葛藤やドラマは描かれない。
極めつけは、宮崎あおい（特別出演）だ。彼女ほどの女優を起用しながら、物語にほとんど有機的に絡んでこないゲスト出演には、話題性重視の意図しか感じられなかった。
結局、本作は「JALとピーチの全面協力」という枕詞がすべてを物語っている。これはドラマの皮を被った、LCCのプロモーション・フィルム（宣伝映画）だったのだ。チェリーズの明るくポップなブランドイメージ、そして「低価格でも人々の夢や笑顔を届ける」というLCCの理念を視聴者に刷り込むこと。その目的があまりにも透けて見えすぎて、ドラマとしてのカタルシスや感動を著しく阻害していた。企業メッセージを押し付けられるよりも、私たちは魅力的なキャラクターの葛藤や、心揺さぶる物語が見たかったはずだ。
『チープ・フライト』は、豪華キャストと「LCC黎明期」という非常に興味深い題材を揃えながら、それを活かしきるための「脚本」という名のエンジンが決定的に力不足だった。コメディとヒューマンドラマのバランスは中途半端で、ストーリーも深みを欠く。単発ドラマゆえの制約もあったのかもしれないが、それにしても、放送時間を埋めるための「番組欄の穴埋め」と評されても仕方のない出来だったと言わざるを得ない。
もし、この題材とキャストで、業界の光と影にもう少し深く踏み込み、キャラクターの内面を丁寧に描く連続ドラマであったなら。あるいは、プロモーション色をぐっと抑え、もっと辛口な人間ドラマとして描けていたなら。そんな「IF」を夢想せずにはいられないほど、ポテンシャルだけは感じさせた、実に「惜しい」作品だ。視聴後、航空業界に興味がある人には物足りなく、これだけの豪華キャストのファンにとっても、満足度が低い。まさに、タイトル通りの「チープ」ではない、心に残る一作を期待したかった、というのが正直な感想だ。

面白かったです✈️🌈
たまたま家で見つけてみたものなんですが、凄い…
格安航空が舞台の作品としては初だったようですね
モデルの航空会社があり、ほぼノンフィクションなのかな…？！🛫🛬

キャスティングも少し懐かしいものもありつつ、とても楽しかったし、ジーンときた

見てみて欲しいです🌫🌈✈️💺

一昨年初の海外旅行で5歳の時ぶりに飛行機乗ったのですが(JALのマイルが溜まっていたため家族旅行で,5歳の時もマイルで行ったようです)
楽しいですよね
なんかワクワクする
ちょうど夜出発だったので、ディズニーの花火が離陸の際見れてワクワクMAXでした笑

格安航空ってどんなものかどうやって始まったのか、あまり知らなかったですが、経緯を知って少し感動しました😢👏
乗りたい！どっか行く時にいいなと思いました
将来活用したい！
今のご時世航空業界は大変なのは承知ですが、耐えて、また沢山の素晴らしいフライトを再開して欲しいです

竹内結子さんいい演技でした😊
この時向井理フィーバーだったのを思い出しました😁

良いフライトを🛫📸💰

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