aji

ロキ シーズン1のajiのネタバレレビュー・内容・結末

ロキ シーズン1(2021年製作のドラマ)
-

このレビューはネタバレを含みます

※好意的な感想ではありません








ロキが好きなので6話まで観たが心底がっかりした。ラグナロクまでの、実際小物なんだけど態度は大物級かつ頭の回転が早いので逃げ足も速いとか、冷静に物事を捉えているようであからさまにうろたえてみせたり激昂してみたりとか、自分の存在を手放しにOKとは思えていないけれども自信が全くないわけではなくプライドはエベレスト級とか、混沌を体現しているロキが好きだったから。ドラマシリーズでは、大きな事象に翻弄され、その事象を俯瞰しようと試みるでもなく、とりあえずその場で逆張りするだけの本物の小物になってしまっていた。時系列としてはDW前だし、ソーと比べてというだけのことかもしれないが、ロキの機転の早さ(=変わり身の早さ)は(私の願望が投影されているのでなければ)ロキのアイデンティティとして無印のときに提示されていたはずで、それが損なわれていたことが特に虚しい。やたら物分かりが良くて善性に目覚めたキャラ造形になってるのはおそらく、神聖時間軸でのロキの生涯ビデオを観たことで自らの過ちや歪みを自覚したことになってるんだと思うけど、1回ビデオを観て反省を促されるひとならそもそも出生の事実を知ってキレ散らかしてNYを破壊するバイタリティなんかないのでは?DWでジェーンを庇って死ぬ(んだっけ?うろ覚え)とかIWでソーのために縊り殺されるとか、善性に目覚めたことでロキが死ぬ展開を好む層が製作側にいるようなので、そもそも私が思うロキとは乖離があるのかもしれないけど、それにしたって1回のビデオ鑑賞+反省部屋での軟禁で改心はしねえよ。してないし。あれはただ自己否定を繰り返すだけの時間だったよ。つかあれヴィランに一方的に説教して気持ちよくなりたい人間が書いたシーンとしか思えなくなってきて具合が悪くなってきたんだが考えすぎか?
ストーリーとしては、物語の起点となった問題をさらに大きな規模の問題で上書きする筋書きに不完全燃焼感が残る。起点となった問題が回収されるならまだよかったのだが結局回収されないし。CA:CWからずっと、こういう筋書きでかつ未回収の問題が放置され続けている(さらに言えばストーリー進行上・役者の契約終了との兼ね合いでもう回収できないケースもある)ので続編ありきで作るのもなんだかなあという感じ。あとは最後何もわからないままクソデカクリフハンガーで終わるのがドラマあるあるなのかもしれないけどホント最悪。そういう裏切られ方は全然期待してない。結局、神聖時間軸→多次元宇宙への移行を説明するためのフェーズ4の導入部分でしかなかったんだから、初めから時間軸の謎に迫る!みたいな方向で宣伝してもらっていいですか?
また、ジェンダーフルイドを設定として出し、バイセクシュアル自認を本編中で語らせておきながら、ラストに外見上男性のロキと外見上女性のシルヴィの唇同士のキスを持ってくる構成に、製作陣のセクシュアルマイノリティ表象に対する態度がうかがえる。彼らにとって、ひとがセクシュアルマイノリティに属することは、単なる設定であり、ドラマティックさを演出するための一要素でしかないのだ。クソ喰らえ。
あと細かいことなんだけど、たくさんの変異体のなかでシルヴィだけが「違う」とロキに言わせたのはなぜ?ただ他のロキとは違うと思いたかっただけということ?私には全然違うとは思えなかったし、ロキがそう思いたくなった経緯も読み取れなかった。これもLOVEで説明したことになってるんですか?いい加減にしろよ。
フェーズ3までと今後の展開を考えると、もうMCUはキャラクタの人物像を掘り下げるよりも世界観を描くことに注力するんだろう。何せフェーズ3までで主要人物の掘り下げは終わってしまっている。また、限りある人物しか扱えない、人智を超えた魔術が登場してしまったので、今後CA:CWのようなイデオロギーの対立を描くことは二度とないだろう。この点についてはサノスあたりから怪しかったが。物語のスケールがマクロになりすぎて自分はミクロな作品が好きだからもうnot for meなのかもしれないと考え直すきっかけになった。洋画にハマるきっかけになったシリーズだったのですごく残念だ。
aji

aji