回想シーンでご飯3杯いける

悪との距離の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

悪との距離(2019年製作のドラマ)
4.3
これまで、Netflixやマーベルのドラマを観て「海外ドラマって映画並みにお金が掛かってて凄い」と感じる事が多かったけど、僕にとって初台湾ドラマとなるこの「悪との距離」を観て、考えを改めた。多分このドラマはそんなにお金を掛けていない。ドラマの魅力は予算やスケールだけで決まるのではなく、この作品のようにテーマに向けた情熱が大事なのだと。

ひとつの無差別殺人事件を軸に、加害者と被害者、その家族、メディア、精神科医、弁護士など様々な立場からの視点で“悪との距離”を描く、とても濃密な群像劇。第1話では殺人犯の弁護人に対して被害者の遺族がうんこを投げつける強烈なシーンで幕を開ける。

日本でも死刑制度の是非が議論になる事があるけれど、僕達は普段加害者と被害者は全く別の生き物のように捉えているので、加害者に対しては人権を無視した意見を持ちがちだ。某芸人が放った「出来損ないの人間」発言などはその最たる例だろう。

死刑囚にも人権があるし、その家族にも当然人権がある。しかしメディアは視聴率を稼ぐために心無い取材を遂行する。日本でも起きているような現象を、本作では真っ向から取り扱い、同じテレビというメディアを使って視聴者に問いかける。(日本のテレビに同じ事が出来るだろうか?)

俳優陣の熱演も印象的で、特に加害者の妹を演じたチェン・ユと、被害者の母を演じたアリッサ・チアが素晴らしかった。台湾の金鐘賞では14ノミネート・6部門受賞。アジア圏内で多数の賞を獲得しているらしい。