YokoGoto

本気のしるしのYokoGotoのレビュー・感想・評価

本気のしるし(2019年製作のドラマ)
4.8
最高だった。本当に最高だった。ドラマ版 #1〜10をイッキ見した。星里もちる原作、深田晃司監督作品。恋愛ドラマなのに、サスペンスタッチにも見えるし、重厚なヒューマンドラマにもみえる。

とにかく、登場人物のキャラクターにリアリティがあって、ドラマの世界に陶酔してしまうような錯覚を感じるシナリオ。色々、ややこしい事が絡み合うのに、まったく強引さがなく、すべてのシーンが自然ですんなりドラマが入ってくる。

とりわけ、何か大きな出来事が起こるわけではないのに、厚みの感じられるドラマになっているから、すさまじい傑作だと思う。

特に、土村芳さん演じる主人公の浮世(うきよ)。
無意識で悪気のないとてつもなく悪い女である。

しかし客観的にみるからこそ、「悪い女」に見えるが、実際はどこにでも存在する普通の女性なのだ。そこがあまりにも残酷で、いらつく。それなのに、どうしても憎みきれない。絶妙な悪さと、絶妙な純粋さ。キャラクター設定が、すべて絶妙で非の打ち所がないとも言える。それを見事に演じた土村芳さんも、そのように仕上げた深田監督の技量も、なにもかもが傑作といえるだろう。

そして、その浮世と偶然知り合うクールな営業マンの辻さん(森崎ウィンさん)。この森崎ウィンさんも、とにかくはまり役。デキル営業マンで好青年でありながらも、不誠実さが見え隠れする微妙な役どころであったが、本来のかわいらしさを抑え気味にした自然な演技がめちゃめちゃはまっていて最高だった。

この二人の物語なのだが、とにかくみんなが微妙に不幸せになる物語だ。
まるで、何もしなければ、静かに波打つ湖畔のさざ波だったのに、悪意なくはいってきた浮世の存在が、まるで日本海の荒波になるかのごとく、皆をかき乱す。

主人公の二人、浮世と辻さんのほんの数ヶ月に起こる出来事が、その後の人生に大きく影響するのだが、その自然な物語の流れが、観てる人に既視感を感じさせ、どこか身震いする怖さを感じながらも、すべて納得してしまうから恐ろしい。

人と出会い、人と関わりあうことは、相互作用である。
片方だけがクールに気取っても、なぜか抜け出せない究極の人間関係に発展する。関わるも地獄、逃げるも地獄。しかし、それが無謀でめんどくさいと思っても、自分で飛び込んでしまうのが人間。

誰にでも起こりうる物語を、客観視しながら、その渦の中に入り込んでしまう恐ろしい傑作ドラマであることは間違いない。

超おすすめの作品です。
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