やんやん

逃げるは恥だが役に立つのやんやんのレビュー・感想・評価

逃げるは恥だが役に立つ(2016年製作のドラマ)
4.0
よかったです。人気作品なだけある。
あるあるな話を散りばめて共感を呼び、他番組のパロディを混ぜることで面白おかしく飽きさせず、決め所は王道なベタドラマで惹きつける。そこに色を添える恋のアレンジを中心とした音楽も秀逸で、それぞれのキャラクターもよく立っていて、全体的な構成がよく練られていると思いました。

自尊感情という話がずっと出てくるけど、のっけから認められたい願望マックスのみくりさんなのに、実は自覚しておらず、平匡さんの自尊感情の低さに悩まされるというのが滑稽で、だけど最終的に相互理解で乗り切ろうと結論を出したのは好印象でした。
たった1人でもいい、心から大切な人に心から認められればそれでいいじゃない。

さて、個人的に目から鱗だったのは“搾取”についての話。

個人的な見解ですが、恋人や夫婦の関係は相互努力の上に成り立つものだと考えている。
さらにはお互いがこうしてあげたいという貢献心の上に成り立ち、利害関係ではないのだ。
その貢献心こそが人を幸せにすると、アドラー心理学を基にした「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」で著書が伝えたかったことだと思っています。
自分ばかりしている!それは愛の搾取だ!なんてのは、自分のことしか見てない考えてないから出てくる発想、発言な訳です。
お互いが対等である恋愛関係や夫婦関係においては、そんなことではやっていけんのです。

語っておきながら論を深めたいのはそこではなくて、仕事関係において“搾取”は良くないと認識を深めたこと。
意外と当たり前に起こりうる問題で、給料が発生しないサービス労働というのは今の時代にマッチしません。
会社としてはやってほしい仕事であるにも関わらず給料は発生しない、けどやるのが当たり前。みたいなことってないだろうか。
例えば本来の出社時間よりも早く来て部屋の掃除をしてくれた従業員がいたとします。
会社としては当然やってくれて有難いし、お客様が来る前には掃除をしましょうと指示している場合すらある。
また、本人もサービス労働だと認識していることも多い。

しかし、仮に実施したのが規定業務時間外で本人納得の上だとしても、そこに時給は発生していないことは問題ではなかろうか。
それを当たり前とみなしていること自体が非常に憂慮すべき問題だ。
時間内では絶対に出来ない仕事だった場合や歩合制の仕事だった場合等、給料が発生し得ないパターンすらある。
働き方改革により残業を減らしましょうという世の中において、じゃあ残業するとうるさいからタイムカードは切って残業してる状態、、、と同じではないか。
自分の職場について考えさせられました。雇用主目線で。。。

とは言いつつ、自分はサービスしてしまう側の極めて日本人的な思考をしている。
その方が社会で生きていくのに適合していると言えるし、信頼が得られるからです。
もちろん過度な残業を良しとしているわけではない。
世間一般的な常識の範囲内で、相互努力という名の無賃労働がまかり通るのが今の世の中です。
言ってしまえば仕方ないことなのです。

だからこそ変わるべきだという話。

昔ながらの専業主婦が終わりを告げた今の時代。と言いつつも終わってない現実。
昔ながらの結婚像こそが至高だと捉える価値観(男女共に)は簡単には拭えないのだ。
周りをご覧なさい。
結婚したら奥さんに家事全般を任せたい男性の多いこと。
結婚したら旦那さんの稼ぎを主たる収入にしたい女性の多いこと。
女性は子供を産むからというごく自然な理由をこぎつけようとするが、女性だって子供を産んだら子供は乳母に任せ働きに出た時代の方が長いのだ。(男性がしっかり家事をする時代があったかは知りません)
知らない人も多いだろうが、日本においてそもそも専業主婦という存在は戦後初めて構築された最新システムで、その最新型にみんなハマっているだけなのだ。
スマホは便利だから使っているという合理的な考え方となんら変わらないのだ。

社会全体のシステムの再構築よりも先に、我々の価値観を変えることの方が先では?
需要がなければ供給はされないのだ。
需要を創造するのは我々庶民だ。
世の中を変えられるのは我々ひとりひとりだ。
自分なのだ。
自分の意見や意思を伝えることで、目の前の相手を変え、社会を変えていこうではありませんか。
私やんやんは“搾取”に断固反対していこうと思います。

…こういう娯楽ドラマでここまで考察するのってやりすぎですかね。
やんやん

やんやん