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リプリーのtsuruのネタバレレビュー・内容・結末

リプリー(2024年製作のドラマ)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

 画がずーと風景も構図も全てバッチリ決まってて決まり過ぎてて逆に名所カレンダー的にすら思えなくもないんだがそこはやっぱナポリ等勝景地なだけあって観てて飽きない。
 
 むしろ物語の不穏さ、リプリーの度胸の綱渡り等とのコントラストが凄くてそれ故にカレンダー感に成り下がらないんだと思う。 ロケ地の素晴らしさ、カメラマンの凄腕映像に引けを取らない登場人物たちの胡散臭さ、陳腐さ、浅薄な場当たり的な行動…
マーシャだけはと思ったけど最後の最後でミーハー感がちらっと垣間見えて貴女だけが頼りだったのに!!って感じだった。金目当てと思わせるような描写すらあってリチャードの絵心ない描写のしつこさ(本人死んでるのにね)といいトムのガウンのセンスいじりといい、イタリアの美しい風景、時間の洗礼(©︎村上春樹)を受けてきた彫刻建物に囲まれてみんなセンスの無さや軽薄さを突き回されるというなかなか酷でスリルに溢れたいい台本というか構成だったなと今にして思う。

 そして何より!アンドリュー・スコットが演じる物腰の柔らかさとチンピラ小物感がたまに出て「しまう」リプリーの演技がめちゃくちゃ良い。街のあちこちにゴロゴロしてる彫刻やホテルの従業員の品定めのような、見透かされてしまうような目線に彼が晒されるのを見守るうちに彼に感情移入してしまったのかもしれない。
 
 最終話でリプリーが金持ち+セレブにコネがあるとわかってリプリーへの嫌悪が好意に変わった?(ダコタのあの演技マジでよかった)マーシャが酔ってリプリーをトミーと呼んだことに対しリプリーがキレる場面でリプリーに対する好意が頂点になった笑 

 マーシャへの、あのシーンの濡れたまま脱ぎっぱなしの革靴やブラジャー等の描写やそもそもマーシャ宅への通り道に下着とかを平気で干す、いびきをかく等の描写がリプリー目線でも物語の背景としてもとにかく酷くてリプリーのセクシュアリティについては直接言及されなかったけど先述した場面とここら辺の古めかしい偏見的な描写で何となく深読みする気になれば出来てしまうのが何とも…
最後の最後であんなに解りやすく入れてきたのはそういう事なのかな〜と。いや、単純に自分に対して嫌悪感を醸し続けてきた上にわざわざ移転先まで追いかけてきて自分を身バレの危機に晒す女なんて憎たらしい以外の何者でも無いのだけれど。
 最終的にゲイである事をスケープゴートにしたのだけれどあのシーンの異様な嫌悪は自分を危機に陥れうる人物に対するそれ以上の何かを匂わせていてとても印象的だった。
  
 土地柄か、階段を登る描写が異様に多くてだからこそリチャードとして最後に泊まったホテルが下の部屋だったのが演出的にとても効果的でこっちまでガッカリしてしまった。

 白の綺麗さとデジタルの階調の豊かな映像が全てを中和してくれてアンドリュースコットのリプリーに集中させてくれる。ウットリ。

 どのボロで捕まるんだろうと食い入るように観てたんだけど結局捕まらなくてそこら辺が昨今のよくできた面白リアル映画?とは違う、逸話っぽい印象になって、モノクロもそれに一役買った形になったよね(こじつけ)。カラーだと君の名前で僕を呼んでみたくなっちゃいそうだしね綺麗過ぎて。

 とまぁ言い出せばキリがない良いドラマだった。
 
 

 
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