きまぐれ熊

アンオーソドックスのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

アンオーソドックス(2020年製作のドラマ)
4.2
ユダヤ教・超正統派(ウルトラオーソドックス)のコミュニティから夫を捨てて逃げ出した女性エスティが自分の人生を生き直す、と言ったあらすじ

ユダヤ教には安息日という働かない日が設定されているんだけど、派閥によっては厳格さにばらつきがあるらしく、中でも超正統派は安息日に走ってる救急車にすら石を投げるとかなんとか言われるくらい厳格な保守派との事。

興味本位で完全教祖マニュアルを読んだ時にウルトラオーソドックスの存在を知って調べるうちにこのドラマに行き当たった
めっちゃおもれーな

日本の一般的な価値観から想像できない要素がてんこ盛り。まるでハイファンタジーの世界

宗教の事を勉強すると、「なんだ日本の日常にも宗教いっぱいあるじゃん」ってなるので、余り嫌悪感とか忌避感はないつもりなんだけど、それにしても刺激的っすよね

もちろんそこに至るまで歴史や論理が存在する訳で。
彼らの当たり前が存在してるだけなので、この世に「普通」なんてものは何処にも無いんだな〜ってことが学べるので宗教は面白い

本作のテーマに関しては気になったことがある
ネットの記事で本作品や、下敷きとなった原作について女性の解放を謳ってるかのような紹介が多かったんだけど、そこが本旨では無い気がするなぁ
女性を虐げる男性が構図として描写されているならまあ分かるんだけど、そういう形では決してない
女性を縛るのもまた女性だったりするし、むしろドラマでは意図的に女性が女性を傷つけるシーンを多く見せているように思う
それに男性が縛られてない訳では無い
コミュニティの中で純粋培養されたエスティの妻、ヤンキーは限られた価値観しか与えられなかったために、本来の優しい性格とは裏腹にエスティの言っていることが理解できない
それが悪い事とは言わないけど、このドラマのテーマの根底にあるのはそういう“正統“にいる人間と、そこから外れた側の生き方に焦点を当てている訳で性別なんで関係ないんだよね

更に言うと、コミュニティを抜けた側も信仰が無くなった訳ではない
信仰自体を否定している物語ではないのだ
なので、宗教ってコワぁ...みたいな話でも当然ない

というわけで、このドラマを性別がテーマとして観るのはかなりセンスのない見方かと思う
タイトル通り「オーソドックス」がテーマとみるべき
まあ原作のプロモーションの方向性としてそっちに舵を切った方が売れると判断しただけなんだろうけどね

ところで気になったのが1話で乗り合わせた音大生にいきなり嫌味で戦争トークを吹っかけられるシーン
やっぱ海外ではよくある事なのかな
歴史とか宗教に関する一般的な関心度合いが全然違うよね
っていうか日本人が自国の文化に興味なさすぎるだけかも
喧嘩をふっかけたのがイスラエル出身の子だったので特別関心があっただけかもしれないけど、こう言うことってよくある事なんやろか

モチーフ自体が超絶面白いのでドラマとしての表現がどうかってのは冷静に観れなかったけど、4話とも楽しく観れました
リミテッドなのに全く終わってないのは解せないが

ウルトラオーソドックスは多産なのでイスラエルの中でもシェアがガンガン増えてるとか、ニューヨークでもコロナ関連で一悶着あったりとか
今後も話題の火種になりそうな気配は感じるな〜
ドキュメンタリーのマイアンオーソドックスライフも見てみたい
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