マカ坊

ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルーのマカ坊のレビュー・感想・評価

4.5
過去の全ての「間違った選択」から非難の目を向けられながら、それでもなお選択し続ける事にどんな意味があるのか。あるいはそもそも「選択」などと言う行為は本当に存在するのか。

近年のポップカルチャーを席巻する「自由意志と決定論」というモチーフを通奏低音として、「ブルーバレンタイン」のデレク・シアンフランスが描く満身創痍の全6話。

一人二役で双子の兄弟を演じたマーク・ラファロ一世一代の名演は、物語の悲劇性や意図的なズームインの多様によって一層その強度を増しており、文句なくキャリアハイ。

とにかく終始苦しい。
なので人に勧めづらい。
これが唯一の欠点か。

直訳すると「これだけは真実だとわかっている」というタイトルの「これ」とは何かという答えは、意外にもというべきか割とハッキリと描かれ、そこだけを取り出せば確かにこれまで何度となく人類が語ってきた類の「テーマ」を題材にしただけの作品と言われてしまうかもしれない。

しかしこれはもう「観ればわかる」としか言いようが無いが、ネタバレを読んでお話の結果だけを確認すればOK、というような生ぬるい満足感を得る類の作品では断じて無い。

2時間の映画では取りこぼしてしまうだろうあれやこれやが、粗く褪せた風合いのカメラに掬い上げられ見事にひとつの「寓話」として綴じられている。

今作の特徴の1つであるこの独特の質感を持った映像が気になり、撮影監督のJody Lee Lipesのインタビュー記事を読んでみた。

中学英語さえ怪しいレベルの英語力なので間違ってる可能性極大だが、いわゆるテクニスコープ撮影?をしたフィルムを少し引き伸ばしアスペクト比に合わせて拡大することで通常の16mmによる映像とテクニスコープによる映像の中間的な画質の画を作ったと。

技術的な知識ゼロなので結局よくわからないけど、そこにはやはり創意工夫があったようだ。
それにしても撮影監督のしっかりとしたインタビュー記事が出てるっていうのがやっぱり海外のジャーナリズムの素晴らしいところ。ほんま撮影中の面白エピソードとかしょうもないこと聞く日本のインタビュー絶滅して欲しい。

少し話はそれたが今作は脇役も素晴らしい。
ロージー・オドネル、ジュリエット・ルイスを筆頭に、シリアスな中にもユーモアを感じさせるキャラクターもおり、実は思わず笑ってしまう場面もある。

ただやっぱり最高なのはマルチェロ・フォンテ!! 「ドッグマン 」で「クレイジーなのび太」を演じた彼が超重要な役で登場。是非もっといろんな作品でみたい…!



結局のところ他者との繋がりとは「呪い」ではなく「希望」なのだ、と思わないとやってられないというか、そう思う事で明日の朝を迎えられるのならそれが何よりですというか、要は言葉で語ろうとするとどうやったって安っぽくなる本物のドラマだという事を言いたいだけだった。必見。
マカ坊

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