風の旅人

クイーンズ・ギャンビットの風の旅人のレビュー・感想・評価

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
5.0
何と言ってもアニャ・テイラー=ジョイの魅力に尽きる。
あの大きな目で見つめられた者は、彼女に魅了され、彼女の虜になってしまう。
それは勝負に負けることを意味するだけでなく、心まで奪われるということ。
ベス・ハーモン(アニャ・テイラー=ジョイ)のチェスは攻撃的で、自分の駒を犠牲にして有利な展開に持っていく「サクリファイス」と呼ばれる戦法を得意とする。
それはまるで『完全なるチェックメイト』(原題『Pawn Sacrifice』 )のボビー・フィッシャーのようだ。
実際には1960年代に女性のチェスプレイヤーが活躍したという史実はない。
本作は「もしも1960年代に女性の天才的チェスプレイヤーが現れたら」というifの世界の話である。
それは男性優位な社会の欺瞞が指摘される現代(たとえば『存在しない女たち』)だからこそ生まれた物語だと言える。
ドラマはいささか性急さを隠せないが、ファッションショーのように毎回華やかな衣装に着替えるベス・ハーモンを見ているだけで目の保養になる。
自分一人で戦っていると思っていたベス・ハーモンが、自分を応援してくれている仲間の存在に気づき、棋風を変化させていく展開は涙なくして観られない。
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