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天国と地獄~サイコな2人~のbeachboss114のレビュー・感想・評価

天国と地獄~サイコな2人~(2021年製作のドラマ)
4.0
面白くなかったと言えばウソになる。んだけれど、何だかなぁ。

「とりかへばや物語」な設定から、てっきりほんわかコメディかと思いきや、意外なほどシリアスで。しかも、どことなく陰険な雰囲気に支配されているから、途中で何度か止めようと思ったんだけど、毎回うまい具合に引っ張られてしまうのよ。絶妙なタイミングで流れてくる手嶌葵の主題歌の雰囲気に乗せられて、これまた毎回ほんのりホロリとさせられ騙されて。

そもそも、こんな題材で「とりかへばや」して遊んだらアカンだろ。こんなシリアスな話にファンタジー設定入れるなよ、被害者感情考えろよ、と。階段落ちで男女入れ替えって、今時のどこの『転校生』だ。設定自体がコメディでしかないんだから、そこから先に重たい展開になったらもう違和感しかないわ。とにかく、笑いとシリアスのバランスが著しく悪いのよ。

それでも悔しいかな、次から次へと障害を作って追い込んでいく展開に「これ、最終的に、どうやって風呂敷たたむんだろ?」ってのだけが気になって、ついつい最後まで見てしもた。

第6~7話ぐらいで徐々に真相が明かされ始めるんだけど、それが思いのほか驚かなくて。何でだろうと思ってたら、そこでハタと気づいた。

これ、「白夜行」じゃねーか、と。

で、「サイコ」「白夜行」でググってみたら、すでに放送当時から多くの皆さんが気づいていらっしゃったようで。

世評が高かったのは分からんでもないけれど、冷静に見たら、妙ちくりんなドラマだったな。特に最終回なんて、バブル期に濫造された「幼稚な学芸会」と「稚拙なご都合主義」の悪しきDNA。30年ぶりに『101回目のプロポーズ』とか『東京ラブストーリー』を再鑑賞してしまった時のような気恥ずかしさ。「あの頃、何でこんなものに熱狂してたんだろ?」「どうかしてたぞ、自分」みたいな後悔と反省。

で、結局、散らかしっぱなしで、きっちり風呂敷たためずに終わってるし。何とも雑なたたみ方。しかも、クライマックスで「偶然」なんかぶっこんで解決したらアカンて。反則やわ。蛇足なオチでさらに安っぽくなったし。

階段落ちが『転校生』だけで終わらず「銀ちゃんカッコいい」なアングルだったり、どさくさ紛れに青島刑事な衣装だったりといったマニアックで無意味な遊びはキライじゃないが、ボヨンボヨンさせて走る綾瀬はるかを何度も正面から捉えたショットから透けて見える現場のオッサンたちのゲスい下心や魂胆には、同性として恥ずかしいというか情けない気持ちになった。いい加減、こういうの、やめようよ。
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