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なぜ君は絶望と闘えたのかのyou1538のレビュー・感想・評価

なぜ君は絶望と闘えたのか(2010年製作のドラマ)
4.0
原作を発売当初に読んでいて、何回断捨離しても未だに持っていて、このドラマがWOWOWで放送されたのも知っていたが、事件のことも鮮明に覚えているし、裁判の度にニュースで見てきてて、どんな気持ちでこれを見ればいいかわからなくて、なかなか勇気が出なくて、見るのに10年かかってしまった。

事件当時から、たくさんの理不尽な目に遭って、たくさんの好奇の目に晒されて、たくさん辛い思いをしているのに、この人は凄く勉強をして、いつも誰に対しても毅然としていて、まさに、なぜ絶望と闘えるんだろうとずっと思ってました。

原作を読んだ時に一番印象に残ったのは、退職を申し出た時、「君は誰よりも辛い経験をした。これからも社会に訴え続ける道を選んだんだろ。労働も納税もしない人間が社会に訴えても、それはただの負け犬の遠吠えだ。君は社会人たりなさい。君がここにいる限り、我々は君を守ることができる」と言った上司の言葉です。

なんという人格者なんだろう。個人として思っていても、組織の人間としてなかなか言えることじゃない。

この上司をはじめ、門田さんと出会ったことも彼を支えていたし、弁護士との出会いも大きかったんだと思う。

事件が無ければ、マスコミに晒されることなく、平凡でとても幸せな人生を送っていたはずなのに、彼は強くならざるを得なかった。こんなことがあっていいわけがない。

「司法が手を下さないなら、私が自分の手で殺す」みたいなことを言ったことは、過激と批判されたこともあったが、家族をあんな殺され方して、しかも犯人が全く反省してなくて、そう思わない人なんているの?本村さんよく言った!と、私は思った。

池袋の暴走事故の時、妻と娘を理不尽に殺され、闘っているご主人を見て、私は本村さんと重なって見えた。

こちらは、逮捕すらされない。司法とは何なのか、誰のためのものなのか、法の下の平等とは何なのか。

加害者が守られて被害者が守られないなんてバカなことはあってはならない。もちろん、加害者も守られるべきではあるが、今の日本においては、あまりにも被害者の人権が簡単に侵害され、加害者が守られすぎている。

死刑判決が下され、本村さんも再婚したと聞いて嬉しかったし、すごく安堵した。

ドラマだとだいぶ美化されたり、端折られたりするかな…と思ったけど、とても丁寧に誠実に制作されていて、見て良かったです。
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